設計のポイント② 全体の配置

今回も前回に続きまして設計のポイントについて書いていこうと思います。
■「全体の配置」
 クリニックは大きな病院とは違い、ある程度先生ご自身が全体を把握する必要があります。理想としては先生が診察室で診察を行いながら、少し動けば待合の様子や受付の状況、処置室の患者様の容態等を把握できる配置が望まれます。診察室で患者様を診ているだけではなく、クリニック全体の流れを把握、管理しなければなりません。同時に各部屋を把握できるという事は 把握=目の届く=近い距離 となりますので、先生ご自身の動線も短く設定できる事になります。さらに先生とスタッフ、スタッフ同士の連携も行い易くなりますのでクリニック内の人員を少なく設定する事にもつながります。診察をしている先生を中心にして各部屋の連携がスムーズに行える配置が基本となるかと思います。
 ■「連携の優先順位」
 さて、先ほど「理想としては」と書かせて頂きましたが、全体の配置を理想通りに配置する事は難しい部分があります。物件の形や状況に応じて配置の優先順位を決めなければなりません。もちろん、広さも十分にあり、設備等の建築条件もクリアした状態でしたら、自由に配置を行って物件の形を決めれば良いのですが、なかなかそのような条件の物件はないかと思います。
 例えば内科の場合、待合室が受付に面していて、診察室や処置室等診察スペースに直接入れ、トイレにも面している必要があります。その上検尿の際、尿コップの流れも考慮しなければなりません。全ての動きがスムーズに行える配置が理想なのですが、全て対応すると待合室が広くなり過ぎてしまったり、入り組んだ空間になってしまいます。必要な配置の中でも優先順位を決めて配置する必要があります。整形外科であればX線室の使用頻度が多くなりますが、内科の場合X線室の使用頻度は少なくなります。待合室からわかり易い配置でなくても、スタッフが誘導できる範囲であればある程度離れた配置も可能になります。いろいろな部屋への動線の使用頻度を確認して優先順位を設定し、より使いやすい配置を考えなければなりません。
 科目によっての連携、配置の優先順位が異なります。その上、地域の管轄の保健所等の役所の行政指導も若干異なりますので状況に応じた配置計画が必要となります。同じ物件、同じ科目でも先生の診療方針によって優先順位も異なり、様々な考え方が出てきます。1つの提案(プラン)ではなく、パターンを変えた複数の提案(プラン)をする事により各部屋の連携の優先順位を決め易くなるかと思います。基本の配置をふまえた上で複数のプランでの優先順位の検証が大切な部分になるかと思います。
 次回は「設計のポイント③ スペースの兼用」についてです。
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2014-05-31