設計のポイント⑤ デザイン・仕様について

今回はデザイン・仕様について書いていこうと思います。ここまでは配置等について書かせて頂きましたが、科目によっておおまかな配置の基本的な部分は共通部分が多く、クリニックの特色やイメージのアピールポイントとしては、やはりデザイン・仕様が重要になってきます。同じ配置や形でも仕様(仕上材)によって空間の印象は大きく異なります。いろいろな素材や形状で先生だけのクリニックらしさやコンセンプト、空間としての安心感、高級感などを演出していきたいですね。この部分も設計士まかせではなく、先生や奥様のご意見を多く出して頂いた方が、よりイメージに沿ったクリニックになるかと思います。ただし、少し気を付けなければいけない部分がありますので、以下に述べさせて頂きます。
■配色や仕様のバランス
 新規に計画する先生だけのクリニックだからこそ、お好きな色や素材をたくさん使用し、お好みの空間造りもできるかと思います。ただ、ここで気を付けなければならないのは、あまりいろいろな色や素材を使いすぎるとまとまりがなくなってしまうという事です。あくまでも空間のコンセンプトを意識した配色が基本になります。まずどのような空間にしたいかのイメージを持ち、それに沿った配色を並べていきます。同系色を並べますと落ち着いた空間になりますし、2色程度の対象的な配色を組み合わせる事によっても落ち着きが生まれます。3色以上の対象的な配色の組合せですと空間に動きが出てきます。あまり色を使わずに同系色の落ち着いた空間をベースに、部分的なアイテムとして鮮やかなビビットカラーをアクセントに取り入れてメリハリを出すことも出来ます。設計士におすすめの配色プランを作成させてから検討する方法もありますが、まずは先生のご希望のイメージをある程度頂いた方が、設計士としてもご提案が行い易くなります。
仕様(素材)につきましても木材や石材、ガラス系の素材や、貼り紙(クロス)や塗装仕上等、さまざまな素材を仕上材として使用することができます。こちらも思いつくままにさまざまな素材を使用してしまいますと、まとまりのない空間になってしまいます。
 配色につきましては「この色」を演出する為の他の配色、素材につきましても「この素材」をさりげなくアピールするための他の素材の組合せといった空間のバランスが大切になります。その上、全体の空間の演出アイテムとして内装の仕上材、ソファー等の置き家具、壁に飾る絵、観葉植物なども含めて、インテリアの構成を確認したいですね。
■デザインと機能、メンテナンス
 さて、空間のイメージができてまいりました。使いたい素材も見えてきました。出来上がりが楽しみだと感じられる方も多いかと思います。設計士としても白黒の図面だけではなく、仕上のイメージを含めた打合せの方が楽しく感じられるかと思います。ですが、仕様やデザイン面と同時に検証しなければいけない部分に機能とメンテナンスがあります。
 デザイン面を重視してR状の壁を多用した空間造りをしたが、あとで設置した家具(収納棚等)が四角い為、壁に沿って置けずに無駄なスペースが出来てしまう・・・。難しい部分ですが、意匠面も優れていて機能も兼ね備えているようなデザインが望まれます。空間演出のなかでそれぞれのバランスをとり、両立させたいですね。
仕様面も同様に、こだわって壁面を塗装仕上にしたが、汚れた場合には壁全面を塗装しなければならない・・・。壁面に左官仕上を意匠的に組み込んだが患者様が壁に寄りかかった際にすりむいてしまった・・・。エッジを効かせたシャープな受付カウンターにしたが、子供がぶつかって怪我をしてしまった・・・。などマイナスな部分を挙げるときりがなく出てきます。住宅のように限られた人が使用するのではなく、不特定多数の患者様、小児科耳鼻咽喉科であれば子供が多いでしょうし、高齢の方も多く来院されるでしょう。まずは危険性のない素材や形状を基本に考え、特別な素材を使用する場合は使用する場所の確認が必要となります。配色も同じですが、要所にアイテムとして使用するだけでも空間の演出はできるかと思います。長く使用して頂くクリニックだからこそ安全であり、メンテナンスも容易に行える素材の組合せが大切な部分と言えます。
■費用対効果
 デザインや素材について書いてきましたが、特別な素材というものは往々にして費用もかかるものでございます。語弊があってはいけませんが、デザイン重視の設計士ですと提案の中に色々な素材をふんだんに組込み、工事費用を算出した際に大きく予算をオーバーしてしまっていたと言ったお話もよくございます。その後の仕様を下げていく打合せは先生にとっても、もちろん設計士にとってもあまりいいものではございません。やはり設計の段階からある程度費用のバランスを見て提案する必要があります。その上で素材やデザインを費用対効果の高い使い方の提案をしなければなりません。
設計のみではなく、施工方法にも深く、施工会社との連携がスムーズに行える設計士であれば、配置や仕様、デザイン、費用をトータルに把握、提案できるかと思います。そんな設計士だと心強いですね。
設計士のハードルがさらに上がってしまったような気がします。
次回からはもう少し具体的な科目ごとの注意点を書いていこうかと思います。
クリニックの設計士屋さん

2014-08-31