開院前の宣伝広告の別の側面について

開業を考えておられる先生方の一番の不安はやはり開業して患者さんが来院してくれるかどうかに尽きると思います。そこで開業場所が決まったら予定地に「○○医院○月開院予定」という看板や貼紙を出したり、新聞の折込広告やポスティング、駅の看板やらバスの車内放送、電柱広告に野立て看板、ホームページの作成や、内装が出来上がったら内覧会等々・・・様々な宣伝広告をして医院が開業する事を知ってもらいたいと考えられると思います。
勤務をしていた病院を退職し退路を断ち、大きな借金をして開業する訳ですから先生方の気持ちもよく判ります。勿論私どものようなコンサルタントも上記のような宣伝広告を提案・紹介していく訳ですが、これまで数多くの先生方の開業をお手伝いしてきた経験を踏まえまして、意外な落とし穴と言いますか、注意しなければならない事がありますのでこの点について触れてみたいと思います。
それは過剰な宣伝広告により開院当初から多くの来院患者数があり結果、待ち時間の長い混んでるクリニックという印象を与えてしまう事があるという事です。そのクリニックのロケーションや診療科目によっても様々なのですが、明らかに開業する標榜科目のクリニックが不足している地域や時期によっては開院初日から多くの患者さんが来院する事が多く、これまで外来の経験の豊富な先生方の診察のペースは問題なくとも、経験のない受付スタッフや慣れていない電子カルテの操作に会計、ましてや全てが手間の掛かる初診の患者になりますので、当然一人一人にずいぶんな時間が掛かってしまいます。しっかりと研修を重ねても実践とは違うというのが実情のようです。
特に新しい近所のクリニックの誕生に期待を寄せている方々にはどんなクリニックだろうという好奇心も手伝い口コミになりやすいですし、中には待ち時間が長くおこって帰ってしまったという話も少なくありませんので「嬉しい悲鳴」では済ませられないところです。
周辺に競合の多い内科系での開業は別ですが、比較的競合の少ない単科の診療科目で人口の多い郊外型の開業の際このようなケースが多いように見受けられます。だからと言ってまったく宣伝広告をしないという訳にもいきませんので難しいところです。予算との兼ね合いを見ながら周辺状況や時期を考慮し慎重に判断するポイントだと思います。
過ぎたるは及ばざるが如しということわざがピッタリする今回のコラムですが、それでもやっぱり閑古鳥が鳴いているよりはいいのかなと思う今日この頃です。
コンサルタント碇

2011-04-30