早いものでもう6月。暑い日も増えてきてエアコンの稼働も増えてきます。清掃やメンテナンスはお早めに行いましょう。
さて今回のコラムは物件の引渡し条件(排水配管)についてになります。以前も似たようなコラムがありましたが、先月2例ほど排水配管に伴う事例がありましたのでご報告を兼ねて。
内視鏡検査を行う消化器内科のクリニックの開業を検討されている先生がおり、とある駅の再開発に伴う大型施設に出店を計画しておりました。建物側のコンサルの方から100坪の物件を紹介され、賃貸借契約の申込まで行なっている段階でのご相談でした。区画平面からどのような平面レイアウトが可能か提案してほしいとの依頼でしたので、区画の引渡し状態などを確認したところ、ほとんど情報がなく、賃貸借の仮契約まで進んだら諸条件の資料を開示いただけるとのことでした。仮契約前に物件がクリニックとして成立するかを検討しなければいけませんので、交渉の上で設備情報などの確認をしたところ、排水配管が75A1カ所のみという内容でした。通常ですと75Aの排水配管にはトイレを1カ所のみの接続、同時使用が無い想定で2カ所までとなります。それ以上ですと配管径が太く無いため流れに支障があり詰まりなどが発生しやすくなります。内視鏡検査を行うクリニックですと理想としては待合側にトイレが1〜2カ所、検査用に1〜2カ所、職員用に1カ所程度必要になります。レイアウトによって併用することも可能ですが、100坪の区画ですので構想では外来診察室2〜3、内視鏡検査2〜3となっており、トイレの数は多くなります。また、診察室や処置室付近に設ける流し台や内視鏡の洗浄機、汚物流しや洗濯機などトイレ以外の排水も必要となり75Aの排水配管1カ所ではまかないきれない状態でした。排水配管を増やすことが可能かを確認しましたが、増設はできないとの回答でした。もともと建物側のコンサルの方には構想を伝えていたようですが、詳しいことはわからずに広さのみの確認で薦めていたようです。結果物件は断念したのですが、いろいろと条件を確認しないまま賃貸借の仮契約を結ぶ、または条件を確認する為に仮契約までというのは良い進め方とは言えません。水周りの設備が少ない店舗や事務所ではなく、動線や使用用途で必要になる水周りの設備が多くなるクリニックですので、物件を検討している段階で引渡し条件などの確認が必須になります。他にも申込みがきているから…。諸条件を確認するには仮契約まで…。だとしても確認するものを確認してから次の段階に進むようにしましょう。建物側のコンサルの方の提案を医療施設に詳しいコンサルの方や設計会社、内装工事会社に相談することが大切です。
もう一件の排水絡みの事例についてはまた機会をみてコラムにいたします。
これから暑い日が多くなります。水分補給などをしっかりとして体調管理にお気をつけ下さい。
クリニックの設計士屋さん