「クリニックに最適です!」

いろいろとヒリヒリとした9月が終わりました。10月になるとさすがに過ごしやすい気候が増えてきましたが朝晩と昼間の温度差もありますから体調を崩さないように気をつけましょう。

 

さて今回のコラムは床上げについてです。先月のコラムでも少し触れましたが、テナントによっては共用部分の床より区画内の床が低く設定されている場合があります。クリニックの内装工事で床上げを行う必要があり、共用部分とフラットの床に設定しているテナントよりは費用はかかるですが、床下で給排水配管の取回しができるため設計の自由度が格段にあがります。トイレなどの排水配管(75〜100Φ)を床下で行うことにより、もともとの排水配管から離れた場所にトイレの計画が可能になります。もちろんもともとの排水配管の立ち上がり位置、配管太さ、配管の形状にもよりますが設計の自由度は高くなります。ですが、少し注意点を。

 

不動産会社などテナントを誘致したい業者の方から「床も下がっているので水廻りの計画がしやすくクリニックや飲食に最適です!」と紹介された何件か物件がありました。50坪ほどの物件で立地としては良かったのですが、ひとつは床は低く設定されていたのですが全体的に共用部分から100mmしか下がっていない物件、もうひとつは入口から離れた奥が200mm、入口付近は100mmという物件でした。基本としてトイレの配管は1カ所で75Φ、2カ所接続なら100Φの配管を使用します。配管の外径で80〜110mm程度になりますので100mmの段差では床下に納まらなくなります。そもそも配管を行う場合には勾配をとりながらになりますのでもともとの配管位置からトイレなどの水廻り設置場合が遠くなるほど配管の高さが必要になります。また、床上げを木材で行う場合には床自体の厚さもありますので100mmの段差であれば配管に使えるスペースは60mm程度になってしまいます。入口から離れた奥が200mm下がっているテナントは奥に厨房やトイレ、入口付近に客席を配置する飲食店を想定されていた物件だと思われます。全体的に100mm下がっているテナントはオフィス向きでしょうか。多くのクリニックの場合は入口となる待合室から入れるトイレが必要になりますので、奥だけ配管が行いやすくても計画が難しくなります。両テナントとも設計上で配置を工夫してクリニックとして成立したのですが水廻りの位置には制限がありました。そこを工夫するのが設計士の仕事と言えばそうなのですが、水廻りの制限がありつつ、床上げの費用も発生してしまう点が残念でした。もともとの排水配管の位置や箇所数、入居する科目にもよりますが、できれば200〜300mm程度床が低く設定されていれば水廻りの場所の制限もほぼ無くなりますし、床上げの費用も必要なものだと説明しやすくなります。クリニックに最適、と言われても立場によっては見え方が変わります。誘致したい立場なのか、設計を行う立場なのか、実際に診察を行う医師なのか。物件を決める前に各専門の立場の方の確認が大切になります。

 

さて、10月はあまりヒリヒリしないで過ごしたいですね…。今年もあと3ヵ月です。無理せずに頑張りましょう。

2025-09-30