今回からは内科の診察スペースについての内容になります。
一般的な診察スペースには、診察室(診察を行う部屋)、処置室(採血や点滴を行う部屋)、検査室(エコーや心電計、内視鏡やX線検査を行う部屋)に分けられます。それぞれの部屋の用途を明確にし、場合によっては用途を兼用して、スペースを計画する必要があります。今回は診察室についてのご説明をさせて頂きます。
■診察室
クリニックにとって一番の核となる部屋と言っても過言ではないと思います。患者様は受付をした後に、まず診察室に入り、先生から初めて診察を受け、その後の治療方針の診断を受けます。先生にとっても患者様にお会いする初めての部屋になりますので、清潔で広いイメージが良いかと思います。
診察室には診察用のデスクがあり、診察台(ベッド)や患者様のイス、荷物置きや脱衣カゴを置きます。
【一般的なサイズ】
・ デスク:一般的な事務デスクの奥行きは70cm程度ですが、ラウンドタイプですと100cm程度になります。デスク上に筆記スペースと電子カルテ用PC、画像用PC、インターネット用PCと3台のディスプレイとキーボードが並ぶかたちになります。インターネット用はノート型でコンパクトサイズに抑える事も可能ですが、診察で使用するPCについてはある程度の大きさが必要となりますので、デスクの幅は160~180cmは必要になります。デスク廻りにプリンタースペースやPC本体のスペースも必要になります。
・ 診察台(ベッド):検査を行わない場合は60cm×180cmが一般的な大きさになります。
・ 脱衣カゴ、荷物置き:45cm×60cm程度
【部屋の広さ】
・ 幅:デスクと診察台を対面に配置した際に先生と患者様のスペースをどのくらい確保するかで部屋の幅が決まります。患者様だけではなく付き添いの方のスペース、車イスで来られた患者様も考慮して100~140cm程度は必要になりますので、部屋の幅としては260~300cm(デスク100cm+スペース100~140cm+診察台60cm)となります。
・ 奥行き:診察台の上下に脱衣カゴのスペース、デスク横にプリンタースペースを考慮すると280~300cm程度のスペースが必要となります。
その他手洗いや診察室を検査室として兼用する場合はエコー等の検査機器のスペースも必要となります。将来的な機器の導入も考え、診察室はゆとりをもったスペースを確保しておいた方が良いでしょう。診察室を2つ設ける場合は同じ広さに設定しても良いですが、全体の面積のバランスからメインの診察室は広めに設定し、予備診察室はコンパクトにする方法や、メインの診察室は診察のみを行うスペースとしてコンパクトに抑え、予備診察室を検査室と兼用しながら広めに設定する事もできます。全体のバランスと先生の診療内容によって検討していきましょう。
ちなみに保健所の規定では診察室の推奨面積は9.9㎡以上となっております。先ほどの寸法の300cm×300cmよりも広い面積が推奨されています。管轄の保健所の指導内容によりますが、あくまでも推奨(望ましい)面積ですので、全体の面積とのバランスと先生が使い易い広さを検討して行きましょう。ご勤務されている先生でしたら現在ご勤務の診察室を基準に「もう少し広い方がいい」や「もっと近くに診察台があった方がいい」、「この広さが使い易い」など、身体を物差しとして広さの基準を把握しておいて頂くとイメージが掴み易いかと思います。
次回は処置、検査スペースについての予定です。
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