今回は継承物件についてです。これまでの実績がありますので、ある程度の来院患者数が読める点から開業時の立ち上がりの不安がなく、内装工事費も最小限で抑える事ができ、場合によっては医療機器も揃っていたりと、いっけん理想的に思える継承物件での開業というスタイルですが、実際のところはなかなか難しい側面もあります。
まず、どういった理由でその医院が継承物件になったのかという点は大きなポイントです。経営不振の為という事であれば、その物件は考え直した方が良いと思います。別の医療法人の分院だったが雇っていた院長が辞めてしまい、次の院長の目処が立たずにという話もよくありますが、この場合は内装工事費や医療機器のリースの残金などを含めての権利金となっているケースが多いので、新規開業と比べても割高になってしまう事もあるようです。しかも今後、長くやっていく事を考えると既存の内装レイアウトがベースになりますので、先生の診療スタイルに合うかどうかというところも気になるところです。
またもう一つ大事なポイントとして、前医院が辞めてからの時間もよく調べなければならないところです。理想としては診療科目が同じであれば前医院が辞める前に診察に同席させてもらい患者さんの引継ぎをして、事前に役所等の手続きの調整をして診察日の空白期間を最小限にできれば良いのですが、何ヶ月も空白があると特に慢性疾患の患者さんは別の医療機関に流れてしまっていますので、新規開業とさほど変わらない広告費や運転資金を用意しなければなりません。もちろん先生自身が開業できるまでの時期に制限があるでしょうから、その期間も考慮しなければなりません。
他にも、雇っていたスタッフをどうするか。前医院(院長やご家族)との関係はどうなるか。それとは別に建物のオーナー(賃貸借契約や条件等も含めて)との関係はどうなのか。等など様々なしがらみをチェックしなければなりません。
もちろん、最初に書いたように理想的な継承開業をされた先生もおられますが、前述したようなしがらみを乗り越えていく覚悟がないまま継承物件ばかりを探していると、いざ話が具体的になってきて断念してしまうケースが大変多いようです。
先生の貴重な時間が無駄にならないように、開業スタイルは慎重に検討した上で方向を定めていかなければなりません。
コンサルタント碇
開業のスタイル(継承物件)
2006-09-18