今回は医院継承における継承元との契約書について書いてみたいと思います。
立地や来院患者数などの条件に納得し継承元との話がまとまるようであれば、継承金など金銭面の事もありますので後々トラブルにならないよう契約書を交わしておく必要があると思います。
基本的な考えとしては『通院している患者さんの治療を継続する社会的責任』という大義名分が目的となりますので、継承ドクター、継承元ともに相応の責任を負うものとする旨を明記すると良いと思います。
また継承するという事はその医院の開設者、管理者になるという事になりますので、基本的に勤務している病院を退職する事になると思います。当然勤務先の病院も「わかりました。明日から来なくて結構です。」という訳にはいかないでしょうし、できるだけ円満に退職する為にはある程度の期間が必要になると思います。これらの時期の問題も継承元と事前に話し合い、いつから継承するのかという事をしっかり決めておく必要があります。
当然、勤務先に退職を認めてもらった後に「やっぱり辞めるのやめます。」という訳にもいかないでしょうから、継承ドクターとしてはリスクがあります。同じように契約を結んだからには継承元としても他から来ている話やその後問い合わせのあった継承希望者にお断りをするというリスクを負ってもらう訳ですので、契約締結時に継承金の3分の1から半額くらいの手付金を支払うような内容にすると良いと思います。残りの残額は継承が無事終了し新しい医院のスタートを迎えた段階で支払うようにすると良いと思われます。ここで双方のリスクを軽減する為に契約締結から継承に至るまでに双方の一方的な都合で契約が解除される場合は、手付金の返金または没収の他、ある程度の違約金を解除した側が支払うよう設定しておく事をお勧めします。
他にも電気・水道・ガス・ネット回線等の公共料金や特に電話番号は継承元にも手続き上、協力してもらわなければ話が進みませんし、近年ではロゴマークやHPの取扱なども権利の主体が継承元にあるのかを確認した上で契約書に明記してもらった方が良いと思われます。
また医療機器等のリースが残っている場合は完済してもらうか、リースの継承という事も可能ですので物と金額を限定してリース会社に確認する必要があります。
継続雇用が条件かどうかにもよりますが従業員を正職員として雇用している場合は注意が必要です。継続雇用する場合は条件が同じであれば比較的問題は少ないのですが、継承するドクターの考えなどで解雇もしくはパートでの再就職となると継承元の責任で対処してもらう必要が出てきます。
個人医院から個人医院として継承する場合は手続き上、医療機関の廃止→新医療機関の開設という事になりますので債務や責任を区分しやすいのですが、医療法人ごとの継承となりますと経理上の債務や患者さんとのトラブルなどが後々発覚するという可能性がありますので事前に充分チェックした上で、原因が継承元の医院にある場合は遡ってその責任は継承元の医院にあるという文面を入れてもらう必要があります。
こうやって羅列していくと医院継承も思った程楽ではない事をご理解して頂けるのではないかと思います。
継承したつもりでも、金額を支払ったあとに近所のもっといい場所に継承元のドクターが開業するという詐欺がないとも限りません。そういった事がないよう継承元と信頼関係を結びしっかりとした契約書を作成、もしくは充分に用心したチェックをする必要があります。
コンサルタント碇
医院継承について2
2010-07-31