クリニック設計のポイント5

今回は診察室について。
クリニックにおいてのコックピットとも言える診察室は、先生が今後の人生で一番長くいる場所にもなるでしょうから、しっかり考えたいところです。
まずは場所ですが、これまでの勤務医時代のように診療に集中できる事だけを考えていてはどうにもなりません。開業するという事は経営者にもなるという事ですのでクリニック全体を居ながらにして管理できるような配置を考えたいところです。
電子カルテの普及により直接のカルテの受け渡しがなくなりつつある受付と診察室の関係ですが、受付スタッフとしっかり連携を取る事で待合室の状況を把握したり、予期せぬトラブルが生じた時にすぐに駆けつける事ができるような距離にしておきたいところです。勿論、受付スタッフも先生の目が近いとより緊張感をもって仕事をするはずです。逆を言うとせっかく診察室でしっかり診療していても受付スタッフがだらしなかったり、患者さんが不満を感じるような対応をしてはクリニックの印象は台無しになってしまいます。
診療時間ギリギリに来院した患者さんを帰したり、隠れてお菓子を食べているという嘘のような話も、実はよく聞く話ですので、そのようなクリニックにならないよう心掛けたいところです。(その前にそんな強者を人選しないようにしましょう!)
同じように処置室やリハビリテーション室も出来るだけ診察室に近い位置に配置し、患者さんの様子や急変などないかすぐに気が付けるようにしたいところです。レントゲンの操作室も同じような事が言えます。
以上の事から診察室というコックピットを中心に各セクションを隣接していけるとベストだと思います。
次に内部について。多くのクリニックの見て感じる事なのですが患者さんの入口から、患者椅子までの距離をもう少し開けるように配置すると良いのにとよく思います。というのは初診の患者さんは特に椅子に座るまでの歩き方を観察したりなど、雰囲気を掴む間がもてるからです。また保護者の方や付き添いの方がある場合もあるでしょうから、その方々にもゆったりとした印象を持ってもらう事は大切な事だと思います。患者さんもいつ開くか判らないドアが真後ろにあると落ち着かないでしょうから、後に2人くらいは座れるスペースを確保すると良いと思います。
逆に診療科目にもよりますが患者さんのプライバシーをどこまで確保できるかも気を付けたいところです。待合室で待っている間や、処置室で点滴を受けている時に診察室の話が丸聞こえでは、今後通院したいとは思わないでしょうから、患者さんと話す方向や壁の防音性なども含めて考え、カーテン等にしても良い開口、天井を開けても良い壁の位置などを考えたいところです。特に最近はプライバシーに関して患者さんが敏感になっている傾向があるようですので注意が必要です。
また電子カルテやCRの普及により診察デスク上にモニターの数が飛躍的に多くなりました。診療内容に関わる事ですので強くは言えませんが、診療科目や患者さんの年齢層によっては抵抗を感じる方も少なくないようです。兼用できるようなモニターであればコンパクトにまとめた方がデスク上も整然として良いのではないかと思います。特に電子カルテの打ち込みに集中してしまいすぎると患者さんとしては置き去りにされたような印象を持ってしまい、評判を落とす原因にもなっているようですので、注意が必要です。とはいえ日進月歩の医療機器業界ですので将来を見据え、電気容量、コンセントなどは余裕を持って配置しておかなければなりませんが。
「病を診ずに、人を診る。」という言葉を聞いた事がありますが、まさにそのような診療を実践しているクリニックの方が地域に愛される医療機関として活躍しているようです。
偉そうな事を書いてしまいまい少々照れくさいのですが、診察室のIT化が加速する現状だからこそ、原点である患者さんとのコミュニケーションを優先して、診察室のレイアウトを構築していく事をお勧めします。
コンサルタント碇

2008-03-31