早いもので今年も12月になりました。いつの間にか季節らしい気候となり空気も乾燥しておりますので体調を崩されないようにお気をつけ下さい。
今回も前回に引き続き実際にあった医療モールの事例に基づいての懸念事項などになります。誇張した表現も含まれております事をご承知頂ければと思います。
③区画の変更、開院時期の変更
前回の②でB工事金額が大幅に予算を超えていた為、事業計画上で開院が難しくなる区画が発生。賃貸借契約を締結してしまっており解約にも違約金が発生してしまう為、プロデュースの薬局と区画のクリニック間で協議。協議の上、区画の面積を狭くする事によりB工事費用、内装などのC工事費用、賃料などを減額する方向で決定。
それにより区画変更に伴う提出図面一式とB工事、C工事の見積書の修正が発生。5区画の同時オープンが難しくなる。予算超えは1区画のみだったが、5区画同時オープンではないのであれば開業を遅らせるという他区画も発生。結果、薬局と3区画のクリニックのみ同時オープン、他の2区画については2ヶ月遅れの開院となる。
*前回の②と同様だが、建物指定業者の施工となるB工事がある場合は早めに概算金額を提示してもらうか多めに予算を組む必要がある。また、今回のように区画を狭くするケースは異例と言え、違約金を支払って解約するケースが多くなる。
④B工事の条件と追加費用
無事にB工事を発注し内装工事を開始した区画の件。着工前は他フロアが営業中の為、工事作業は夜間のみと指定されていたが、実際には空調や消防設備のB工事は昼間、内装造作のC工事のみ夜間となる。C工事の中でも騒音や臭いの発生しない作業は昼間に行えないかと協議するが、昼間はB工事が入っている為不可との事。実際には毎日B工事の作業はないので何も作業がない昼間の時間帯が発生。B工事の費用は夜間として算出しているが減額は無し。また、途中から区画を形成する壁や自動ドアは別途となる。B工事業者の説明だと区画の壁は区画ごとにガラスを自由に組めるようにC工事にて行う事、自動ドアについては枠やガラスなどのサッシは含まれているが自動ドアのエンジンは含まれていないとの事。
*追加費用、夜間工事費用についてプロデュースしている薬局と交渉し追加費用なし、夜間作業費分の減額となる。B工事見積に記載があるのでその内容に相違がある場合は減額(もちろん追加ああれば増額も)となるのは当然と言える。大手のB工事業者の言いなりにならないよう、契約発注内容については見積、図面などで確認し、C工事の設計会社、施工会社にも把握させる事が必要。またB工事業者との直接の交渉ではなくプロデュースしている側から交渉するようにしておく事も必要。
⑤消防検査、建物検査後の追加
内装工事が完了してからの消防署の検査、建物の検査時に追加項目が発生。
消防検査 避難口誘導灯設置が追加で発生。C工事側が作成した図面では設置を予定していたが、先のB工事費用調整の際にB工事業者判断で設置を見送っていた。事前に消防署に確認をした上での台数減であれば良いが、B工事判断での台数減、消防署の指摘で追加設置の為、追加の費用については全てB工事側で負担する事になった。
建物検査 区画の入口の他、区画内の施錠できる部屋は全てマスターキー仕様として非常時に建物側がカギ1本で入室できるようにする。プロデュースの薬局が建物側から聞いてはいたが区画に伝えていなかった為、建物検査時に発覚。自動ドアと内装ドアではカギの構造が異なる為、同じカギで解錠できるようにするためにはドア自体の交換も必要となる。クリニックの診察室や処置室などは診察時間帯には診察状況によっては施錠するが、診察後の退出時には施錠を行わないとの覚書を作成し建物と協議、了承を得る。
今回の医療モールの案件での多くの不具合は頻繁に起こりうる内容では無いとは思います。他医療モールの計画などでもお手伝いしておりましたがこれほどまでの不具合はなく、事前に協議して解決する内容がほとんどです。今回についてはプロデュースしている薬局側が当初建物側やB工事側の言いなりになってしまっていたところが原因のひとつとして考えられます。医療モールを計画する上で建物の条件や工事区分、工事条件、B工事の概算金額などを把握した上で各区画の募集を行なって頂きたかったと思います。医療モールとして良いことのみ説明して、フタを開けてみれば未定の部分が多かった、では今回の様に大変なことになってしまいます。今後医療モールなどに入居を検討されている方はプロデュースしている方がどのような方なのか、他の医療モールの実績はあるかなども確認した方が良いでしょう。
さて今年も今月で終わりとなります。皆様にとってどのような年だったでしょうか?来年も引き続き宜しくお願い申し上げます。
クリニックの設計士屋さん