今回は賃貸借契約と言うよりも、契約締結前にチェックすべきポイントについて書きたいと思います。検討している物件が、すでに建っている場合は、しっかりと内見をさせてもらいましょう。
医療機関として借りる訳ですから患者さんが入りやすいアプローチになっているかどうかは、高齢者の多い内科や整形外科には特に大切なポイントになると思います。
1階であれば外からその建物に入るまでに段差がないかどうか。入口(自動ドア)は車椅子でも楽に入れる開口があるか(約80cm 以上)。クリニックに入ってから床上げなどの段差がなくレイアウトができるかどうか。もし上の階であれば、それらに加えてエレベータまでのアプローチとエレベーター自体の大きさも気になるところです。9人乗り以上であれば車椅子の方も入れますが、中に入ってから回転できなかったり、付き添いの方の事も考えると11人乗り以上の物であれば尚良いと思います。
段差がある場合はスロープ等の設置も考えなければなりませんが、勾配が1:8以上の通路が必要になりますのであまり得策とは言えません。
また、対策はありますが朝日や西日がきつくないか、雨や台風の時に雨水が入ってくるような事がないか等の自然現象の事も考慮したいところです。
築年数が経っている建物であれば、雨漏りや窓の開閉がスムーズにできるか等もチェックしておかなければなりません。契約が済み内装工事に取り掛かってしまってからでは、責任の所在が曖昧になり借主の方で負担しなければならなくなる可能性もあります。
将来的に出る時の事も考えて、退出の際は原状回復が原則ですので、写真や図面なども残しておきたいところです。長い年数を借りる事が予想されますので、当時の状態を覚えていなかったり、オーナーが代わったりする事もあります。悪い状態で借りたのに、綺麗にして返せという話になってしまっては証拠が必要になり、意外と残っていないケースが多いのです。
またレントゲンが必要な診療科目であれば、電気容量も確認しなければなりません。医療ビルで募集している建物でも設計会社が医療機関の必要容量を把握していないケースが私が知る限りでも少なくありません。建物自体に変電設備があっても残りの容量が足りなかったりすると、その増設に多額の資金が必要になるケースもあります。
電気同様、レントゲンやCT、MRI等は重量もありますので、上の階の時には気を付けなければなりません。1階であっても、床下にピットを設けている建物もありますので油断はできません。またCTやMRIになると搬入経路のスペースも考慮しておかなければ、外壁を壊して開口し、搬入後、補強も含めて外壁を作り直すという事態にもなりかねません。その辺りにくると、やはり実績のある専門業者に一度相談、見てもらった方が良いと思います。
最後にその物件が区画整理や計画道路に掛かっていなかも確認しましょう。セットバックしなければならなくなると、現実的にその場所での診療の継続は無理だと考えられますし、立ち退きで補償金をもらったとしても、その場所で患者さんが着くまでに払った努力が報われる程は期待できません。
今回は不安を煽るような事を書いたような気もしますが、対策を講じる事でクリアできる事も多いと思います。
多くの開業の場合この不動産の契約を締結してからは、開業を取りやめると債務が発生する事になってしまいます。
先生方の開業が後悔のないものになるよう、少しでも参考にして頂ければ幸いです。
コンサルタント碇
賃貸借契約のチェックポイント4
2007-02-28