今月のコラムは施主と設計士の関係性についてです。あくまでも私が考えている関係性なので、全ての案件にあてはまるわけではないことをご承知おき下さい。
タイトルにもありますが、一を聞いて十を知ると言うことわざがあります。物事の一部を聞いただけで全部を理解できる、聡明で察しのよいたとえです。クリニックの設計を依頼、提案してもらう際にはもちろんクリニックの動きや必要な部屋や設備などを把握・理解している設計事務所の方が良いです。ドクターやスタッフの動き、診察の流れを理解した上での提案や打合せはスムーズに進みます。ドクターである施主と提案を行う設計士が同じ土俵での話し合いができます。内科を標榜するが専門は呼吸器なのか循環器なのか消化器なのかでも必要になる設備や部屋の構造も変わってきます。皮膚科でも美容関係にどのくらい比率を置くかによっても提案は変わります。施主の要望や構想を聞いて全てを理解し提案できる設計士ですと実のある打合せができるでしょう。
さて、ここで注意なのですがまれに一を聞いて十にする設計士もおります。一を聞いた段階で自分なりに把握して考えて十にする設計士です。一のこの状況だとこれが十になります。これが正解です。と言った提案が多くなります。もちろんその十が正解かもしれませんが、途中の二から九を飛ばしてしまう為、十に到る経緯が無くなります。打合せや提案の簡略化としては適しておりスムーズな進め方とも言えますが、十の背景にあるものが共有できておらずに、後々トラブルになる場合があります。病状としては栄養失調で点滴処置が正解かもしれませんが、栄養失調に到る原因や要素を検証しないと、その患者さんはまた栄養失調になるでしょう。その時は正解かもしれませんが、その後の事も考える必要もあります。
一を聞いて十にする設計士では正解の十までの提案となり、その先の十一、十二へ続く提案ができなくなります。一からふた分かれで二になると考えますと、十までには512通りの道筋ができます。一を聞いて十を知る設計士は施主の要望や構想を聞いて理解し検討し、数あるうちの正解の十を提案する設計士だと思います。あくまでも設計士としては提案であり、その提案をもとに施主と一緒に検討し正解の十を決めるものだと思います。内科だから、皮膚科だから、眼科だから、整形外科だからではない提案。医者だから、設計士だからではないクリニックの開業を良いものにするパートナーとしての関係性。そういうものにわたしはなりたい…。
漠然としたコラムとなり失礼致しました。インフルなどの感染症も流行っております。引き続き体調管理には気をつけてお過ごし下さい。
クリニックの設計士屋さん