前回に引き続きまして受付についてのご説明になります。
■受付のスペース・イメージ
受付のスペースについては前回もご説明致しましたが、受付事務スタッフの人数によって広さを計画しましょう。あまり広すぎても他のスペースを圧迫してしまいますし、狭すぎても作業が円滑に行えない、患者様への対応が行い難いといった支障が出てしまいます。
受付のスペース(カウンター)と言うと、クリニックに入ってから最初に患者様を対応するクリニックの顔のようなものです。内側の作業面がPCやコピー等の機械だらけであったり、その機器の配線が患者様からまる見えであったり、受付スタッフが作業しづらい形状ですと、良い表情のクリニックではなくなってしまいます。
以前ですと紙カルテを使用し、受付カウンターの背面あたり(すぐ取れる場所)にカルテ棚が数台並んでいる状態でした。近年は電子カルテ化が進んだ事でカルテ保管のスペースがなくなり、収納のスペースをだいぶ削減する事が可能になりました。待合(患者様)から見える部分には作業に必要なPC(電子カルテ、予約システム等)、スキャナー、レジ等を配置、プリンターやシュレッダーは見えにくい足元に配置して作業スペースを広く確保しましょう。コピー、FAX等の大きな機器や事務用品保管用の収納棚については作業スペースとは別に裏側に設けると良いでしょう。ドアで区切らなくても壁等で仕切りを設けて待合(患者様)から見えないスペースを設ける事で、受付カウンターの印象もすっきり見えますし、カウンターの作業スペースも広く確保でき、良い表情のクリニックになるのではないでしょうか?受付スタッフの方も患者様から見えないスペースがあると一息つけますしね。
■スタッフのスペースについて
・スタッフ休憩室
クリニックのスタッフが着替えたり休憩するスペースになります。スタッフの人数によって更衣用のロッカーの台数(大きさ)を設定しましょう。休憩時に食事をするスペースを設け、流し台や洗濯器を配置して給湯室と併用する事が多いかと思います。休憩時に靴を脱げるようにあえて段差を設けたり、床の仕上げ材をカーペットにして床に直接座れるようにする事を希望される先生もおります。ただ、スタッフの方によってはテーブルとイスの方が良い場合もありますので、床材はビニル系のものを選定し、イスの場合はそのまま使用、直接床に座る場合はマットやカーペットを引いてどちらでも使用できるようにする事をお勧め致します。
・院長室
クリニックの院長先生が休憩室するスペースです。基本的には院長先生のみ、ご家族の方(奥様等)もスタッフとして勤務される場合はその方も使用するスペースになります。J更衣用のロッカーやデスク、書籍棚等の配置が主でしょうか。クリニックまで自転車で通われる先生はシャワー室を希望されたりします。基本的には院長先生のパーソナルスペースになりますので、院長先生のご希望を頂ければと思います。
ちなみにですが、配置によってスタッフ休憩室と院長室を隣接させる場合は区画の壁の防音も考慮しましょう。聞かれたくない話や聞きたくない話もある場合もありますので。
スタッフのスペースの基本内容をご説明致しましたが、「設計のポイント④ 必要なもの?」でも記述したように、クリニックの面積に限りがある場合、広くスペースを確保できない場合があります。「休憩室」を「更衣室」と考えたり、来客は診察室で対応し、「院長室」は「院長先生の私物倉庫」と考えたりする事も必要になります。近隣でアパートを借りて休憩室にする事もできます。あくまでも診療のスペースを圧迫しない程度のバランスで計画しましょう。
<まとめ>
さて、ここまで長々と(だらだらと?)内科クリニックについてのご説明をさせて頂きました。他の診療科目では異なる部分もありますが、クリニックの大きな流れ、定義としては共通する内容が多いかと思います。かたよった内容もありましたが、待合室、受付、診察室、処置室、トイレ、休憩室等クリニックに必要な部屋(スペース)の基本の内容かと思います。
次回からは他の診療科目についてのご説明になります。まずは「耳鼻咽喉科」の予定です。今後とも宜しくお願い申し上げます。
クリニックの設計士屋さん