今回は医療業界で使われている用語を設計関係に置き換えて考えてみようと思います。
「インフォームド・コンセント」
直訳すると「正しい情報を得た上での合意」、「十分な説明を受けた上での同意」となるでしょうか。社会的には、医療行為の中で医療従事者(医師)と患者との間で、治療方法や薬の効果を十分に説明して方針を決めていく事の意味合いが強いと思います。専門的な知識を持った人とそうではない人と何かを決めていく上ではとても大切な事だと思います。
クリニックの設計の提案についても、医師と設計者が十分な説明や検討を重ねてお互いに理解をした上での合意(提案の決定)が望ましいことだと思います。設計者側の一方的な判断や設計者任せでは先生のクリニックではなくなってしまいますし、逆にクリニック側の要望重視でもチグハグになってしまう事もあります。医療の専門家と医療設計の専門家なのですから、お互いにコミュニケーションをとって方針を決めていきましょう。
「セカンド・オピニオン」
こちらは分かりやすく、直訳すると「第2の意見」となるでしょうか。社会的には患者側がひとりの医師の診察、症状の判断や治療方法(ファースト・オピニオン)とは別の医師にも診察を受けるといった意味合いが強いかと思います。どちらかと言うとネガティブに捉えがちで、このクリニックの診察だと良くならない、不安だから他のクリニックも受診してみる…といったイメージもあります。医師側としては自分の診察(意見)より、他のクリニックの意見を重視するのかと感じてしまうかと思いますが、前述のインフォームド・コンセントの観点から考えてみますと、十分な説明を受けて理解して治療を受けたい患者側の意見となります。どちらが正しい、正しくないという判断ではなく、2つの意見を十分に検討して判断したいという事だと思います。
設計の提案に置き換えますと、プランについてもひとつのパターンよりも複数のパターンのプランを検討するべきです。設計ではこの考え方だとこのプラン、この考えではこのプラン…とそれぞれメリットのある複数のプランを提案できます。ひとりの設計者で難しければ、他の設計者に提案してもらう事もできます。やはり設計者としては他の設計者にも意見を聞いていると言われればあまりいい印象は受けませんが、検討する事はクリニックを創り上げる上では大切な事だと思います。患者の治療方法は医師の判断ではありますが、当事者である患者の理解があってからこその治療方法となるように、プランについても設計者の作品ではなく、当事者である医師の理解があるからこそのプラン決定となります。信用が無い訳ではなく比較検討して再確認したいと、ネガティブではなく前向きに考えましょう。
さて、今回の2つの用語で共通する事はやはり当事者どうしのコミュニケーションだと思います。医師と患者、医師と設計者。どのような立場や関係であっても、ひとつの事をふたりで決めるにはコミュニケーションが大切です。いいなりやおまかせではいけません。それぞれ意見を出して検討してコミュニケーションをはかっていきましょう。
…あくまで第三者的な観点からのコラムです。念のため。次回についてはまだ未定です。またコラムらしいコラムとなると思います。よろしくお願いします。
クリニックの設計士屋さん