「適正な価格」

6月になりジメジメとした気候が多くなりなかなか過ごしにくい時期になりました。気温も上がったり下がったりですので、皆さまも体調管理にはお気を付け下さい。
さて、今回のコラムのタイトルは立ち位置によっては少しドキっとするタイトルになっておりますが、内容につきましてはあくまで先日体験した個人的な内容になっております。あらかじめご了承ください。

都内でクリニックの候補地を探している時の事です。1フロアに2区画、2フロアで合計4区画の物件がありました。1区画自体は25坪程度と手狭だったのですが、ターミナル駅近くで立地の条件はとてもよい物件でした。先生と内見を行なった際に、オーナー様から1フロアの2区画を隔てているコンクリートの壁を壊しても構わない、4区画で120万だった賃料も80万に下げるというお話がありました。もちろん借りる側としては有難い内容だったのですが、賃料の大幅値下げに不安を感じました。コンクリートの壁を壊す事は建築構造上で問題は無いか、建物に手を加えた際に解約時の原状回復はどのようになるのかについてオーナー様に確認したところ、前のテナントは壊していたので問題無いと思う、構造上は問題ないはずだ、と明確な回答は頂けませんでした。他にも申し込みが入っている為、早く契約して欲しいとの事でした。その場での回答は控え、後日物件について役所や消防署に確認をとったところ、違法建築で是正の指導を受けている物件だという事がわかりました。おそらくオーナー様としては契約を締結した上で違法建築是正はテナントの問題としたかったのだと思います。クリニックの設備投資は一般店舗と異なり多額の費用がかかり、通常10~20年は移転をしない事を前提とします。長期間の契約を結び法規上の問題をうやむやにしたかったのではと推測されます。ですが、実際にはうやむやにはできず、入居後もオーナー様とテナントに是正の勧告がありますし、もしかしたら開院自体ができなかったかもしれません。ケースバイケースではありますが、あまりに極端な条件の変更などがあった場合には一歩引いて客観的に検討する必要もあります。
どの業者もほとんどが慈善事業ではなく、それぞれのメリット(利益)を得る為に動いております。大幅な賃貸条件の変更や内装工事費の値引きにはもとから値引きを前提とした金額設定をしている可能性もあります。不動産の提供、業務の依頼の対価はお互いにメリットのある適正な価格を見極められるように注意しましょう。
クリニックの設計士屋さん

2018-05-31