クリニック設計のポイント3

前回は待合室のレイアウトにつきて書きましたが、今回は待合室に置く物について。
まず待合室で一番存在感がある物はイス・ソファーだと思います。正直なところ、床・壁・照明の仕上げがすごく感じがいいのに待合室のソファーが台無しにしているクリニックを多く見かけます。理由として考えられるのが、内装をする設計士とイスや棚などを扱う業者さんが異なる為、統一したイメージが持てない。次に医療機器業者が扱う什器備品(イスや棚・机等)は圧倒的に種類が少ない等の理由が挙げられると思います。
イスやソファーについては必ずしも医療機器業者の物を選ばなければならないという事はないと思いますので、多少面倒でしょうが家具メーカーの資料を取り寄せたり、実際に家具屋や展示場をまわるくらいの気持ちを持ちたいところです。その際にクリニックの仕上げ材を担当した設計士やカラーコーディネーターにも同席してもらい意見やアドバイスを聞けると尚良いと思います。
色やデザインだけでなく、材質なども重要になってきます。診療科目にもよりますが、高齢者がメインの診療科目ですと座る位置が低く柔らかい材質のソファーは一見、座り心地が良く高級そうに見えますが、足腰の弱い(病気や怪我をしている)高齢者にとっては立ち上がるのに相当な負担が掛かってしまいます。また足の部分が細い単体のイスや、患者さんが増えた時に折りたたみ式の椅子を用意しようとするアイデアは小児科や耳鼻科など子供が多い診療科目では退屈な待ち時間の恰好のオモチャとなり思わぬ怪我にも繋がりかねませんので注意が必要です。
また金額的に頑張りすぎて、開院日にボールペンで目立つ汚れが付いてしまい凹んでおられた先生もいらっしゃいましたので、拭き取りやすい素材の物やカバーが付いていたり比較的簡単に張替えができる物の方が精神的にも良いと思います。
あと子供のオモチャになりやすい物としてプラスチック製のブラインドもこれ以上折れないという程パッキパキになっている場合がありますので、そういった診療科目のクリニックには布地のロールスクリーンできればウォッシャブルタイプの物がお薦めです。
テレビを置く、音楽を流す等のサービスは先生方のお好みで良いと思います。声の大きい先生ですと診察室の声が待合まで聞こえてくるとマズいですので効果的な設置場所に何らかの音響設備があった方が良いかもしれません。最近はテレビもずいぶん薄くなり壁掛けタイプ等、場所をとらなくなってきました。また、PCと連動させてクリニックや病気予防のインフォメーションを待合室のモニターで流すサービスなども好評なようです。また雑誌や本を置くラックや掲示板の位置などを最初から考慮して待合室のレイアウトを考えると後々困る事も少ないと思います。
せっかく独立した自分のクリニックですので、好きな物や趣味を出す事も悪くないと思います。そうする事によって患者さんとの距離が近くなったり、コミュニケーションをとるキッカケになったりするケースもあります。例えば知る人ぞ知る有名なスピーカーを設置して、音楽好きな患者さん達と話が膨らみ休診日に音楽鑑賞会をクリニックで開催する事になったり、趣味の登山に関する専門書を本棚に並べていた事がキッカケで友人ができたり等など、比較的軽度の患者さんの多いクリニックだからこそできる事であり、地域に密着するという意味では大変良い事だと思います。
ある鉄道模型の好きな先生はカルテを電車で受け渡すアイデアも出ましたが少々やりすぎでしたので模型を飾って披露する程度にしてもらいました。
仕事場に個人的なコミュニケーションは必要ない。重軽度に係わらず医療機関に相応しくないという考えも勿論あると思います。ただ看板を出して待っていれば患者が来る。という時代から患者様が選んで来院する時代に移り変わっています。何らかの特殊性やサービスは大変重要な意味を持ち、ひいては安定した医療を提供し続けるクリニックの存続の大きな助けになる事もあるのではないでしょうか。
次回は受付にスポットを当てて書きたいと思います。
コンサルタント碇

2008-01-31