「整形外科について⑤」

今回はいよいよリハビリ室についてになります。リハビリ室は大きく「物理療法」と「運動療法」に分かれます。

「物理療法」
主に器械を使用した処置を行う療法です。首や腰の牽引、マッサージ、温熱や冷却、電気刺激を患部に行う療法です。運動療法の効果も上がりますので運動療法前に行う事が多くなります。さまざまな器械を使用しての療法ですので、牽引やマイクロ波、干渉波の台数等どのような設備を揃えるかによってスペースも大きく変わってきます。また、導入する器械に対しての注意点としまして、
・マイクロ波
器械が発するマイクロ波が影響して消防用設備の煙感知器が誤作動を起こす可能性が高くなります。マイクロ波を発生させる器械を導入する予定がある際は事前に設計会社や施工会社に相談した方が良いでしょう。
・ウォーターベッド
水装填後の器械自体が重い為、床に補強が必要になる場合があります。また、水を装填した状態では移動が困難な為、搬入経路の確保、水道設備の有無の確認が必要となります。電源についてはベッドごとに動力電源(3φ200V)となり、個別のブレーカーが必要となります。将来的な台数も含めて設置場所や電源計画を確認しましょう。
・その他としてはやはり器械の電気容量やコンセント計画、水道設備の必要性をメンテナンス時を含めてメーカーに確認した方が良いでしょう。

「運動療法」
器具等を使用した歩行運動や上下肢、関節等の部分運動、トレーニングマシンを使用した全身運動になります。こちらも運動の種類によって器具の種類が異なり、スペースも大きく変わってきます。トレーニングマシンを導入する場合は他のテナントへの振動を考慮して対策をとった方が良いでしょう。物理療法と合わせてどのような方針のリハビリ室にするかを事前に検討しましょう。
また、特掲診察料「運動器リハビリテーション料(Ⅰ)」「同(Ⅱ)」の適合を受ける場合、
①45㎡以上の面積をもつ機能訓練室を設置
②医師は3年以上の運動器リハビリの診療経験、または運動器リハビリ研修が必要
③専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士が一定数以上勤務
※(Ⅰ)・・・専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士が合わせて4名以上
(Ⅱ)・・・専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士のいずれかが2名以上、あるいは合わせて2名以上勤務
④測定器具、血圧計、平行棒、姿勢矯正用鏡、各種歩行補助具、各種車イスなどを装備
「同(Ⅲ)」の場合は
①45㎡以上の面積をもつ機能訓練室を設置
②専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士のいずれかが1名以上勤務
③歩行補助具、訓練マット、治療台、砂嚢などの重錘、各種測定用器具などを装備
となります。開院時だけでなく将来の構想をたてなけらばいけませんが、共通してリハビリ室45㎡以上がひとつの基準となります。その他の部分は器具やスタッフの人数になりますので変更は行いやすいですが、開院後にリハビリ室を広げる等の変更は、その他のスペースを狭める必要があり、工事には時間も費用もかかってしまいますので容易では無いかと思います。当初から45㎡以上のリハビリ室を確保するクリニックが一般的だと思います。なお、物件面積によりリハビリ室を45㎡以上確保する事が困難な場合はリハビリ室と処置スペースを兼用して基準を満たすクリニックもあります。ただし、兼用する分、リハビリ器械のスペースがとれなくなりますので、やはり余裕のある物件面積が望ましく感じます。整形外科の場合、どのようなリハビリ室にするかで他のクリニックとの差別化をはかれます。リハビリ器械の種類、台数、X線装置の種類や骨密度の導入等、事前に検討してクリニック全体の必要面積を検討しましょう。

整形外科についてはとりあえず今回で最後になります。次回は未定ですが、「コラム」らしさを出していきたいと思います。

クリニックの設計士屋さん

2017-03-31