「おざなりではなく真剣に。」

今年1回目のコラムとなります。
さて、今回はとある設計変更依頼の話です。地元の有名工務店で新築クリニックの設計と施工を進めていた先生からの依頼でした。完成が近づいており内部のソファーやデスクや診察台などの什器の選定をしていて気づいたとの事ですが、規格サイズのソファーが入らない、診察デスクは幅120cmまで、診察台は置けてもエコーの置き場がない…。色々と不具合が分かり工務店に修正の相談をしたところ、ソファーは製作で別途費用、建築の届け出上で変更はできない、この内容に合わせて使って欲しい。そもそも図面で確認をしてもらっている…との対応で私のところに相談がありました。
結論から言いますと修正は出来ない状態でした。木造の新築だった為、壁位置の変更を行うには柱の位置の変更を伴い、大幅な修正が必要となります。設計段階であれば図面の修正で済むのですが、建築の申請済みで、しかも建物自体も完成間近、あとは建築検査を受けるのみの状況では修正は出来ませんでした。とは言えクリニックとして成立しない間取りではなかった為、部屋の用途の変更や診察デスクや診察台の配置変更等を提案して先生には我慢してもらう事になりました。先生としては新築クリニックなのにイメージ通りではない、変な工務店に捕まったと言われていました。たしかにクリニックに詳しくない工務店だったようで、提案に不足していたところはあると思います。

…が、設計・施工の立場から感じた点は、設計の段階で先生のイメージの共有ができていない、どのような使い方をするかが伝わっていない、提案図面の確認をしていない…など、先生と工務店とのコミュニケーションが取れていなかった事が原因だと感じました。ひとつの疾患を医師と患者がどのような方法で治療していくかを話し合うように、ひとつのクリニックを創り上げる為には先生と工務店、メーカーなど関係者がしっかりと話し合い進めていかなければいけません。工務店やメーカーは以前別のクリニックではこうだったから…とおざなりな提案となる場合がよく見られます。専門業者に任せておけばと…先生もおざなりな確認となる場合もあります。経験則は勿論大切です。ですが、病気と同じように患者さんひとりひとりの環境や原因を話し合い治療をしていく事と同じように携わる方々が真剣に向き合っていかなければならないと思います。今回の件は大変失礼なのですがお互いに原因があるかと思います。

おざなりではなく真剣に。今年も引き続き宜しくお願い申し上げます。
クリニックの設計士屋さん

2019-01-31