「一年を振り返って」

 3月のコラムのタイトルとして違和感はありますが、2010年1月に国内でコロナ感染者が確認されてから13ヵ月。一年少し経ちました。前回まで新築関係のコラムを長々と続けておりましたが、その間も色々な変化がありました。医療関係はもちろんの事、社会全体でも緊急事態宣言も発令され、社会の様式が変わりました。外出自粛、時短営業、リモートワーク、手洗いうがいの徹底…。ワクチン接種も始まり徐々に落ち着いていって欲しいと切に願います。さて、今回はここ一年を振り返ってクリニックという施設としての変化や要望をお伝えしたいと思います。

・換気設備
 クリニックでの換気能力を高めたい、診察室にも外気を取り入れたいとの要望が増えました。建築でも換気能力の基準はありますが、それ以上に目に見える形で換気機能を向上させたい要望が多いです。賃貸物件でのクリニックの場合、外壁側の窓が限られていたり、開閉できる窓が無い場合もあります。平面のプランニングの際に窓の位置も考慮する事も多くなりました。窓が設けられない場合でも、換気扇や全熱交換機などの提案も増えました。

・手洗いやトイレ
 待合室などでも手洗いができるように手洗器の設置の要望があります。ひと昔前ですと待合室やトイレの前に手洗器を設けるクリニックもありましたが、昨今はトイレの室内に設置して外部には設けない事が一般的でしたが、やはり衛生的の観点から待合室に手洗器を設けたいとの要望です。また、手洗器やトイレも手を触れないように自動水栓や自動開閉、自動洗浄機能が求められています。

・受付
 以前は院内調剤の為、受付の窓口は小窓にしているクリニックが多くありました。今はオープンカウンターが主流ですが、飛沫感染対策として遮蔽板を設ける事が多くなりました。とはいえ完全に遮蔽するわけではなく、受付カウンターの上部に下がり壁や下がり天井を設けてカウンターとの間を遮蔽するなど、圧迫感を出さないような提案を心掛けています。

・仕上材料
 基本は拭ける素材。消毒ができる素材となります。その上で抗菌機能や制菌機能付きの素材も求められています。

 その他、換気頻度を考慮して空調容量を検討するなどここ一年でクリニックとしての平面計画や設備基準の変化がありました。色々な生活の変化、社会の変化もありますが、クリニックという施設としても変化がありました。紙カルテが電子カルテに移行するという設備の変化ではなく、考え方そのものの変化があった一年だったと思います。クリニックという施設は様々な状況に対応して変化を求められる施設だと感じました。
 
 短めのコラムの予定でしたが案の定…。次回こそは短めのコラムを目指します。今月もありがとうございました。

クリニックの設計士屋さん

2021-02-28