早いものでもう6月。今月末には一年の半分が終わります。これからはゲリラ豪雨や台風なども多くなりますので戸建のクリニック様はもちろん、テナントのクリニック様も浸水被害のないよう、改めて屋上やバルコニーの雨水の排水口の詰りや換気フードの防水などをご確認頂きたいと思います。
さて、今月のコラムは先日実際にあったクリニックや薬局の内装時の基本的な届出に関する注意点についてです。テナント工事で内装の設計を請負う設計事務所と施工を請負う施工会社にそれぞれ依頼し、クリニックの新規立ち上げを予定している方がおりました。設計については先生と打合せを重ねてイメージ通りの設計図ができたのですが、施工については数社の見積をとり、最終的に価格の安い施工会社に依頼しました。基本は住宅の施工がメインで、店舗の施工実績もある会社のようです。レントゲン室の無い小児科のクリニックでしたので防護工事が必要なく、ある意味住宅などと同じような間仕切壁や家具、仕上、設備工事となります。設計事務所も設計監理として施工会社には指示を出していたようです。工事自体は問題なく完了し、保健所の検査も完了したのですが、開院準備期間中にある機関より指摘が入ってしまいました。…消防署です。本来は工事着工前に工事計画届・消防設備の計画届を提出し、工事完了時には使用開始届・消防設備の設置届を提出して現地にて検査を受けなければいけないのですが、施工会社が届出を行なっていませんでした。管轄の消防署から査察が入り発覚したケースとなります。結果としては避難口誘導灯の増設、一部内装仕上材の変更(準不燃材料から不燃材料への貼り替え)となりました。
開院前の忙しい時期に内装仕上材変更作業などが入り、準備が進められない、追加で費用が発生するなどの件で私のところに相談を頂きました。消防署への事前確認は保健所と同様に基本的な業務であり、設計事務所や施工会社の業務に含まれるものだと思います。設計事務所としては知っていたが施工会社が届出を行なっていないとは考えておらず、準不燃の内装仕上材料についても事前に施工会社から指摘が無いので問題は無かったと考えていたとの事。施工会社は住宅の内装では届出を行わない事がほとんどで行うとしてもクリニック自身が行うものだと言う考えでした。もちろん届出自体はクリニックや施設の管理者名義となりますが、専門的な図面の作成や設備業者とのやりとりが必要な為、一般的には施工会社が行うものです。
結果として消防署からの指摘事項の是正工事を行い、追加費用についてはクリニックと施工会社にて折半、準備はドタバタでしたが、無事に開院する事ができました。
クリニックにしても薬局にしても ひとつの施設を立ち上げる際には様々な確認事項があります。保健所・消防署・建築など役所関係から、場合によっては地域の商店街や自治体に確認が必要な事もあります。以前のコラムでも書いた事ですが、ご自身の施設を立ち上げる訳ですから設計事務所任せ、施工会社任せというように業者任せにはせず、携わる関係者みんなで確認する事を心がけましょう。形や流れが出来上がる前に確認する事が基本です。みなさまもお気をつけ下さい。
クリニックの設計士屋さん