「設計会社の置き土産…」

今回は夏らしく実際に体験した(している)少し怖い話となります。若干ブラックな表現が含まれておりますがご了承頂ければと思います…。

 7月の下旬に電話が鳴り、とある薬局に伺いました。内容を確認すると8月11日から2週間程度を休業し店舗の全面改装を予定しているとのこと。この段階で違和感は感じていたもののさらにお話しを伺いました。全面改装との事で6月くらいから設計会社と設計の打合せも行い、紹介された工務店が工事見積書も作成し概ね予算内だったとの事です。…やはり違和感は拭えません。ここまでの話ではとくに問題は無く、このまま予定通り進めれば良いのかと思います。私は勇気を出して訊いてみました。
「それは良かったです。それで本日はどのような…」

「…実は設計図が現地の寸法や状況と合っていない為、予定通りに工事ができないのです。」

何という事でしょう。
どうやら改装の設計図は建物の建築図面をもとに作図されていて現地の確認をしていないまま進めていたとの事です。寸法が異なる為間仕切壁が変更となる。解体する予定の壁は壊せない壁だった。新規予定の水まわり位置に給排水の配管が無い。天井に間接照明などを設置してイメージを刷新したかったが梁がある為全くイメージ通りにはできない。梁がある為、空調機の配置も適切な位置にはできない。工事内容が大幅に変更となるので工事費用も大幅に追加となる…。
このような状況でしたら工事自体を再考するべきですねとお伝えはしましたが、薬局什器の発注はすでに済んでおり、キャンセルすると費用が掛かってしまう。それよりも近隣のクリニックに改装工事の予定を伝えており、今更改装しませんでしたとは言えないとの事です。打合せを進めていた設計会社や工務店は逃げてしまい、どうしようもなくなって電話をした状況でした。

(以下不適切な表現が含まれます)

設計会社も工務店も「ふざけるな」です。長期間行っていた打合せは一体なんの打合せだったのでしょうか?新築でも設計図の確認は大切ですし、改装工事であればなおさら現地の把握と工事内容の確認は大切な部分です。現地で打合せをしていながら現地の確認をしないとはどういう考えだったのでしょうか?イメージパースを作成して打合せを進めていたようですが、イメージはあくまでもイメージで実際とは大幅に異なります…なんてパースを作成する意味がありません。工務店に関しては設計図をもとに現地も確認せずによく費用の算出ができたものです。見積書の内容も紙1枚の概算見積書で工事を進めようとするなんてもってのほかです。基本概要として設計図と概算費用の算出、せめて工事1ヵ月前には現場の確認と調整をするべきです。
また薬局さんも「ふざけるな」です。自分の薬局です。全てを業者任せにせず、当事者として確認をしなければいけません。現地で打合せをしているのであれば設計図ではこうなってますが、ここの壁は壊せるのですか?ここの梁がイメージパースには無いですが、どのように工事を行うのですか?など専門的な知識は無くても(無いからこそ)疑問に思ったところを質問・確認しなければなりません。専門家に任せていたからと言うのは言い訳です。

 取り乱してしまいすみません。結果を申し上げますと改装工事は行います。もちろん大幅に内容を変更してです。工事期間については若干調整し、もともとの休業期間中にできるところまで工事を行い、その後は営業しながら工事を進める事になりました。患者様に多少ご迷惑がかかる点は薬局さんからクリニックにしっかりと伝えて頂く事を前提としてですが。
 
 新規でも改装でも薬局でもクリニックでも設計図は大切です。実際には出来上がっていない壁や家具の紙ベースの設計図ですが、壁や家具を実際に出来上がらせる為の設計図です。紙に線を引く事に責任を持ち、確認する事にも当事者として責任を持って下さい。

 いろいろと不安定な世間の状況のなかですが、皆様もお体にはお気をつけてすごされて頂ければと思います。

クリニックの設計士屋さん
【2021/07/31】

2021-07-31