院外処方箋

開業を目指している先生方にお会いして開業地の希望をお聞きする際、賃料や階数の条件や人口や競合機関についての立地状況については構想をお持ちの先生方も多いのですが、お薬について考えていらっしゃる先生は意外と少ないように感じます。
話を詰めていきますと首都圏での開業において、薬価差もなく仕入れや保管のスペース、また調剤・投薬の手間を考えるとかなりの負担になりますので院外処方を望まれる先生方が多くなります。
患者さんにとってみれば、クリニックで受診し一緒に投薬してもらった方が待ち時間や(厳密に言うと)コスト面でも助かるのですが、処方箋を出されれば調剤薬局を探すしかありません。その際、近隣に薬局があれば患者さんの負担は軽くなると言えます。
「あのクリニックで診てもらうのはいいけど、薬局がなくて大変」というのではマイナスの評価になってしまいますので、開業地を選ぶ際、近隣の調剤薬局の状況もチェックしておきたいところです。もう少し掘り下げて言うと、せっかく綺麗な新しいクリニックができても近くの薬局はボロボロで薬剤師さんの愛想も悪く、おまけに先生とは違うニュアンスで薬の説明を受け薬の数を間違えられた。なんて事になっては先生やスタッフの皆さんの苦労も報われないというものです。基本的には調剤薬局を選ぶのは患者さんの自由意志な訳ですが近所に1件しかなければ多くの患者さんがその調剤薬局を利用すると考えられますし、長いお付き合いになる訳ですから重要項目として捉えておきたいところです。
逆に近隣に調剤薬局がない場合はどうするかという問題もあります。300m離れたところにあっても健常者の300mと気分のすぐれない方やお年寄りの300mとでは意味合いが変わってきます。患者さんの帰宅途中や自宅付近にあるのではと楽天的な考えもあるかもしれませんが、より利便性を求める患者さんには選ばれないクリニックになってしまう可能性もあります。
そのような際、我々のようなコンサルタント会社をうまく利用されると良いと思います。開業予定地近隣に調剤薬局が出店できそうなテナント物件を探したり、先生と相性の良さそうな薬局・薬剤師を紹介してくれるコンサルタント会社も多いと思います。そのような人脈やネットワーク、話の進め方はコンサルタント会社によっても違うでしょうからコンサルタント会社選びの際の指標にしても良いのではないでしょうか。ただテナント物件や売地・貸地が近隣にない場合にはどうしようもありませんので全て大丈夫という訳ではありません。
近年多く見受けられる医療ビルや医療モールの場合、他の科のクリニック(先生方)との相性等の問題もありますが、比較的しっかりとした調剤薬局が入っている事が多いですので、その部分のメリットは大きいと思います。
また近隣に競合機関が多くあるところで開業する場合は、あえて院内処方にする事で、先に述べました仕入れや保管スペース、人員や手間などのデメリットもありますが、患者さんに喜んでもらえる(選ばれる)クリニックとして差別化を計るという考えもあると思います。
今回は業界のグレーな部分に踏み込んだ話となり少々冷や汗が出てきましたので、このあたりにしておきたいと思います。
コンサルタント 碇

2009-07-31