「基準の変更について」

本年1回目のコラムとなります。引続き宜しくお願い申し上げます。

建築業界の基準や決まり事というものは過去の事例によって変わったり追加される事があります。わかりやすい例ですと水道のレバー水栓は以前下に下げると水が出ていたのですが、阪神淡路大震災の際に水栓金具の上に物が被さってしまい水が止まらなくなってしまった為、以降は上に上げると水が出るように変更されました。他にも新宿のビル火災以降に防火管理者の扱いが変更されたり、過去の痛ましい事故を繰り返さないように基準が変更されてきております。勿論その変更自体は行うべきであり遵守するものだとは思います。ただ、語弊があるかと思いますが、基準や決まり事が厳しくなりすぎると対応が難しい事もあります。

大阪のクリニックで放火がありクリニック関係者が犠牲になる事件がありました。その際に避難経路は?スプリンクラーは?との報道もありましたが、おそらく現行の基準に適応した内容で施工された施設だったと思われます。消火器の設置や不燃材料の使用など、一般的に考えられる事故、火災であれば対応できたと思われます。京都のアニメ制作会社での放火も同様に防火設備としては基準に適応した施設だったと思います。今後同じ様な痛ましい事件が無いように基準を変える事も必要だとは思いますが、このような事例を基準にしてしまうと適応できない施設がほとんどになってしまいます。建物の構造上、設備上で適応できない事や改修工事費用の問題もあります。

あくまでも一般的な事故を想定して基準があります。先例のような状況は事件であり、悪意を持った行動の防御は設備としての対応は難しいかもしれません。勿論人命にかかわる事ですので何よりも優先して考え対策は必要になります。今後基準が変更されて、より安心できる環境づくりが基本になるかもしれません。ですが突発的な事件に対しては全てを防ぐ事は難しいと思われます。事件が起きた施設の設備基準に一部では批判もありましたが本来であればそのような行動を起こす前の抑止、起こさせない環境づくりが必要だと感じます。

1回目のコラムからまとまりの無い内容となってしまいましたが、今年もお付き合い頂ければ幸いです。

クリニックの設計士屋さん

2022-01-31