設計のポイント④ 必要なもの?

今回は「必要なもの?」についてになります。「必要なもの?」といっても漠然として何の事だかわかりませんね。クリニックを開設するにあたり、どのようなものが必要か不必要かの検証を行っていこうと思います。
■必要なもの
 もちろん各部屋で診察を行う上で基本的に必要となるものです。待合のイスや受付の事務機器、診察室であればデスクやベッド、処置室に器具収納用の棚、スタッフ用のロッカー等、いろいろなものがあります。この部分は基本となりますので割愛させて頂きますが、実際に置く大きさを想定して配置計画をたてていく部分になります。
■必要かの検証が必要なもの
 それぞれの設備(スペース)が必要かどうかを検証する部分です。例えば待合室で子供が遊べるプレイコーナー、トイレでオムツ替えができるベビーシート。トイレ自体も車イス対応のトイレとは別に男性用、女性用のトイレをそれぞれ設けるか。診察前に問診室を設けるか。または診察前に中待合室を設けるか。バックヤードであれば流し台や洗濯機を設置するか・・・等、いろいろな設備(スペース)が出てきます。科目や地域の状況、先生ご自身のコンセプトによって必要度合いは異なりますのでその都度先生のご要望を確認していきます。その上で必要かどうかをしっかりと検証していく事が大切です。もちろん、開院時には迷っているが、今後必要となるかも知れない、患者様の年齢層によって設置を考えたい、患者様が増えてきた頃に増設を再度検討したいといった決定しきれない設備も多くあるかと思います。ここで大事なのは今後の導入を含めて必要かの検証を行う事です。   
①開院時から必要        →  設置しましょう。
②今後も設置する必要がない   →  もちろん設置しません。
③開院時は未定だが、今後再検討 →  設置する事を前提とした配置計画。
①と②に関しては問題ないのですが、③については設置するものとして配置や設備計画をたてます。例えばスタッフ休憩室に当初はなかった洗濯機を導入する場合に、もともと給水や排水の配管を用意していなかったので、壁や床を大きく解体して配管を持ってこなければなければないといった大改装になりかねません。診察が始まってからですと改装工事に長く日にちを設ける事も難しいかと思います。開院当初から導入を迷っている部分でしたら、導入する事を前提に改装工事も行いやすい配置や設備を計画しておきましょう。
■将来を想定して
 さて今後導入する設備は事前にある程度準備しておく事が可能になりますが、部屋(スペース)となるとなかなか簡単には準備しておく事はできません。既設の物件をお借りしてクリニックを開設した場合などは将来患者様が増え、スペース拡張の為に増築を行う事は難しいかと思います。基本的にクリニックで拡張するスペースとしては
 ・患者様が増えた為、待合室を広くしたい。
 ・対応するスタッフを増やすので受付を広くしたい。
 ・非常勤の先生も診察を行うので診察室を増やしたい。
 ・処置室のベッドを増やしたい。
 ・独立した検査室を設けたい。
など、待合や診察のスペースが主になり、クリニック内になければいけません。物件の広さが変えられない条件ではやはりバックヤードなど上記スペース以外を外に出し、クリニックとしての設備を充実させる事になります。開院時はクリニック内に職員休憩室や院長室を設けておいて、患者様が増えてきた頃に近所に1室借りて職員休憩室や院長室を移してクリニックの診療スペースを確保する先生も多くいらっしゃいます。院長室をクリニック外に移すだけでも「院長室」→「休憩室」 「休憩室」→「検査室」といったスペースの置き換えができるかと思います。
 あまり先の事を考えすぎるとまとまりがなくなってしまいますが、ある程度の将来を想定し、その際に改装しやすい配置、事前の準備が大事になります。開院時が「完成形」ではなく、「現時点での完成形」として今後の状況に応じてフレキシブルに対応できる配置を検討していく必要があります。
■改めて「必要なもの」
 必要なものの続きです。ここまでの将来を想定した配置や前回のスペースの兼用をふまえてのお話です。職員休憩室や院長室などをどのくらい確保するかのポイントです。もちろんそれぞれ広く確保してゆっくりできるスペースが望まれます。ただ、限られたスペースの中では診察スペースに制限を設けるより、上記のバックヤードスペースを調整してバランスをとる必要があります。
 例えば職員休憩室の場合、スタッフの勤務状態にもよりますが、パート勤務で午前午後でスタッフが交代する場合は休憩室内で食事をとったり休憩する事がなく、ユニフォームに着替える「更衣室」として考える事もできるかと思います。また、午前午後で通しでいる方でも休憩するタイミングは診療時間外となりますので、クリニック外にお食事に出て頂いたり(気分転換にもなります)、使用していない処置室やリハビリ室を休憩室として使用する事もできるかと思います。
 前回の時間帯でのスペースの兼用を考え、バックヤードにどのくらいの広さが必要かを検討する事も大切です。ただし、職員休憩室は狭く更衣室程度なのに、院長室は広くゆったりしていてシャワールームも付いている・・・といったプランですと、スタッフからはあまりいいイメージを持って頂けないかと思います。あくまでも診療スペースは充実した上で、先生やスタッフの方が働きやすいクリニックとしてのスペースのバランスがポイントになります。
 スペースの兼用、将来を想定、必要な広さ、全体のバランス。全てを含めてのプランニングの検証が気をつけなければならない部分になります。
 次回は「設計のポイント⑤ デザイン・仕様について」になります。
クリニックの設計士屋さん

2014-07-31