内科(受付①)

 これまでは待合、診察スペースについて説明してきました。今回からは受付やバックヤードのスペースについてのご説明をしたいと思います。

■受付について
受付は待合室に面し、患者様を対応するスペースになります。クリニックの入口からわかりやすく、待合全体を把握できる配置が良いでしょう。主な機能としては患者様の受付、診察券や保険証の確認、カルテの準備、会計、次回の予約の確認や、電話応対等の事務的な業務が挙げられます。以前は紙カルテを収納するスペース広く確保しなければなりませんでしたが、近年は電子カルテが主流となり、収納スペースを少なくでき、レセプト入力、会計等の受付業務も簡素化された為、患者様をあまりお待たせせずに対応できるようになりました。受付事務のスタッフの人数としては常時2名、混雑時に3名体制で対応するクリニックが一般的ではないでしょうか。受付の方の人数を設定し、使用する機器の配置を検討しましょう。

■配置について
受付に設置する機器ですが、電子カルテ端末1~2台、プリンター、コピー、FAX、スキャナー、予約システムを導入する際は予約システム用のPC、インターネット閲覧用の一般PC、シュレッダー等になります。受付カウンターの中でも「受付」「事務作業」「会計」「収納」スペースとエリアを計画し、それぞれを使用する目的を確認して配置を決め、スタッフ同士がスムーズに患者様と対応できるようにしましょう。ただし、PC等の配置は今後の機器の増設や配置変更に対応できるように内側のスペースには余裕を残し、電源やLAN設備も計画しておきましょう。

■形状について
 一般的な受付カウンターは2段形状となり、患者様と対応する高めの天板と事務作業を行う内側の作業天板の2段の天板があります。高めの天板は床面から950~1050mm程度で設定する事が多く、基本的に立って対応し、天板上で書類やお金のやり取りや問診表の記入を行います。ご高齢の患者様が多い地域でしたら、少し低めに計画した方が良いでしょう。内側の作業天板は基本的に座って作業するスペースになりますので、一般的な事務机と同じ床面より700~720mm程度になります。
作業天板上にPCモニターやキーボード、マウス、レジや、ペンたてやテープ等の細々とした事務用品をおきますが、患者様側からあまり見えないようにし、PCモニターについても向きを考慮して画面を覗かれないようにして個人情報保護の対策も必要となります。また、PCモニターは17~19インチモニターを使用する事が多く、作業天板(H700mm)の上に配置しますと、患者様側の天板(H1000mm)から50mm程度裏側が見えてしまう事になります。待合室側から受付カウンターの印象をすっきりさせたい場合は、患者様側の天板を高めに設定したり、作業天板のPCモニターを設置する部分のみに段差を設けて高さを調整する方法や、PCモニター配置部分のみスクリーン等を設ける方法もあります。受付のイメージに合わせて検討しましょう。
作業天板下にはPC本体や無停電装置、プリンター、シュレッダーを配置しますので、スペースが必要となります。昔の事務机のように、下部までの引出しを設けるより、引出しは1段のみとするか設けないで足元のスペースを広く確保し、キャスター付きの収納ワゴンを配置した方が、自由度が高くなります。引出しを設ける場合は引出しの深さは浅めにして、収納ワゴンが入るように計画しましょう。収納ワゴンの高さは600mm前後のものが多いですが、前もって確認しましょう。作業天板にあまりスペースを確保できない場合は引出し部分にキーボード収納や作業用にスライド天板の設置も検討しましょう。
高さだけではなく、奥行きも重要になります。先の述べた機器を作業天板下に配置しますので、それぞれの機器の寸法の確認が必要です。(機器未定の場合は想定。この大きさまでは設置可能・・・といったように確認しましょう)また、本体寸法以外にも電源コードやLANケーブル等の配線のスペースも必要となりますので、プラスアルファーの余裕を持ちましょう。ただし、あまり余裕を持ちすぎますとカウンター全体の奥行きが広がってしまい、患者様との距離が遠くなってしまいます。受付カウンター全体の奥行きは700~800mm程度とし、平面上で患者様側の天板は300~350mm、作業天板は400~450mm程度が良いでしょう。平面上で作業天板が400~450mmでも、患者様側の天板下にスペースを設けて、作業面としては550mm前後は確保しましょう。PCモニターを配置する部分では患者様との対応は無くなります(PCモニター越しでの対応は行わない)ので、患者様側の天板を掘り込み、作業天板を広く計画しましょう。
高さや奥行きの寸法確認の他にもPCモニターと本体を繋ぐ配線のルート、配線用の開口、待合室側に手荷物を置く棚(台)等も検討し、受付カウンターの形状を計画しましょう。

次回は受付のスペースのイメージや収納スペースについてご説明したいと思います。

クリニックの設計士屋さん

2015-05-31