「眼科(手術室)」

今回は眼科の手術室まわりについてになります。
眼科だけではありませんが、手術室の場合にどのような仕様にするかによってだいぶ内容が変わってきます。また、施術の内容によってもどこまでの仕様にするかも変わってきます。まずは施術の内容からみていきましょう。

■手術の種類
一般的な眼科の手術は基本的に視野機能の回復や維持が目的となります。手術以外に回復の見込みが無い場合や緊急性が高い場合に手術を行うことになります。一般的なクリニックの場合、緊急性の高い症状(外的要因や網膜剥離等)の患者様は少なく、基本的には視野機能の回復や維持を目的とした手術となります。
ただの設計のお手伝いをしている者ですので、浅い知識となりますが、一般的な眼科クリニックで行う手術としては、白内障、緑内障、網膜症や斜視、黄斑のレーザー治療が挙げられます。施術によっては入院も必要となりますので、どこまでの施術を行うかを決めておきましょう。

■手術室の仕様
当たり前ですが、手術室には清潔さが求められます。簡単な外科的処置であれば、通常の清潔度の処置室で行うクリニックも多く見られますが、近年の院内感染への注目度を考えますとあまりお勧めはできません。患者様としましても安心と安全は第一前提にしておりますし、もし感染症が発生してしまいますと、クリニックへのダメージも計り知れないものになります。リスクを回避する上でも手術室は清潔に保たなければなりません。

・清潔度(クリーン度)
手術室の清潔度(クリーン度)ですが、基本的には空気中の塵やゴミの数量によってランク分けされます。1立方フィートの空気中に0.5μmの微粒子がどのくらいあるかで表現します。
100個以下 クラス100
1000個以下 クラス1000
10000個以下 クラス10000
100000個以下 クラス100000
とするNASA基準が多く使われています。
一般的な眼科クリニックではクラス10000を目安としている所が多くなります。

・仕様(設備)
では、クラス10000のクリーン度を保つ為にはどのような仕様が必要になるかを説明します。こちらも大きくわけますと空調設備、室内の仕上材、その他の付帯設備が挙げられます。

①空調設備
他の部屋(空間)と比較して空気を清潔に保たなければいけませんので空調設備も特別なものになります。多くは空気清浄機能付きのクリーンエアコンを設置して室内の空気をHAPAフィルターで濾過し、塵やゴミを除去します。クリーンエアコンの仕様によっては天井給排気、壁や床や天井を経由する方法もあり、部屋の作り方が変わってきます。ひと昔前はある1社のクリーンエアコンが普及していましたが、クリニックレベルの機種が特注となってしまったりして、他社のものも選定されています。メーカーではなく、機種の仕様やランクで選定した方が良いでしょう。
また、手術室内は陽圧に保ち、他の部屋の空気が入らないようにしましょう。

②室内の仕上
手術室の室内は塵やゴミが溜まりにくい素材が求められます。床は抗菌性のビニル系の素材が一般的ですが、抗菌材を配合した樹脂系の塗床材もあります。壁や天井も防塵クロスや化粧ケイカル板が多く使用されます。基本的には塵などが付着しにくい素材で抗菌性の高いものになります。また、できるかぎり塵が溜まらないように棚などは壁に埋め込んで段差を無くすようにしましょう。

③その他の付帯設備
空調設備や仕上材以外にも注意が必要な設備があります。入口は自動ドアにして消毒後の手を触れないで入室できるフットセンサーや埃が溜まりにくい照明器具、手術室前の準備室や消毒室の仕様、術前術後の説明や回復スペースなども関連して考慮しなければなりません。

■手術室について
ここまで色々と浅くご説明してきましたが、手術室を計画する場合は経験のある設計会社や施工会社に相談される事がポイントになるかと思います。基本ベースとして手術室に対する知識があり、提案ができる会社が良いかと思います。もちろん先生の考え方によって仕様も大きく変わってきますので、まずはどのような施術を行い、どのような手術室にするかの方向性を検討して頂いた上での計画になるかと思います。それによってはクリニック全体の広さや環境、費用も異なりますので、一般外来だけではなく、手術も行うクリニックを検討される際はまずはしっかりと方向性を検討しましょう。患者数を増やしたいから…ではなく、しっかりと方向性を決めて安全と安心な医療を提供できるようにしましょう。

まだまだ注意する点はありますが、手術室・眼科についてはこのあたりとさせていただきます。ただの設計士の浅い知識をベースとした偏った考えとなっているとは思いますが、ひとつの考え方としてご検討頂けますと幸いです。

さて、次回については未定です。またNステージさんと相談して決めたいと思います。今月もありがとうございました。
クリニックの設計士屋さん

2016-03-31