医院開業物件の賃貸借契約のポイント

賃貸借契約書のひな形の事前確認の重要性

ビル診療や建貸し等の場合、物件オーナーと締結する賃貸借契約を安易に考えて、後々になってオーナーや不動産管理会社などとトラブルになり、最終的に移転、ということはよくある話です。

賃料はこのコロナ禍でも話題になったように、クリニックの売上の大小にかかわらず、負担しなければならない固定費であり、支出部分において人件費に次いで支出の多い費目となります。

そこで、賃貸借契約を締結する前に最も大切な事は賃貸借契約書の雛形を事前に見せてもらい、充分にその内容を確認・把握し、必要があればできる限りこちら側にメリットあるように修正を依頼することです。

家賃交渉のポイント

新築の建物の方が綺麗で患者受けもよいため、多くの先生方は築浅物件を検討されます。

しかしながら築浅物件は多くの場合において、オーナー側もまた自身の融資の返済中であったりして、家賃交渉にはなかなか応じてくれないということもあります。

そこで狙い目としては、借り入れの返済が終了したと予想できる築10年前後以降の物件となります。

このようなケースでは賃料など、金額面での交渉にも応じてくれるケースが多いように思います。

オーナーとの交渉回数は短くがベター

オーナーや不動産管理会社と交渉する前には必ず賃貸の申込書を出します。ただし、この申込書には法的な拘束力はありません。
申込書を提出したからといって、キャンセルできないということもありませんのでご安心ください。

ただし、オーナー側もまずは借りたいという意思表示を得るために申込書の提出を待って交渉を受付けるということになります。

その後、賃貸借契約書の雛形を見せてもらい、フリーレントを含む賃料や賃貸契約期間等の交渉文を作成・提出し、オーナー側からの初回の回答で借りるかどうかを決定する、という流れで契約することがベターです。

たまに何度も何度もオーナー側と交渉する先生がおられますが、長い付き合いとなるオーナー側に不信感を持たれる結果となりますので、なるべく少ない回数で賃貸の可否を決めたほうが後々のオーナーとの関係性においてもメリットが大きいと思います。

賃貸借契約前のチェックポイント

正式に賃貸借契約を締結する前にチェックするポイントとしては、計画物件等ではなく、既に存在している物件であれば、まず患者さんが入りやすいエントランスになっているかどうかは、高齢者の多い内科や整形外科の場合には特に大切なポイントです。

賃貸借契約前における物件の具体的なチェックポイントとは

ここではより具体的な物件のチェックポイントを説明していきます。

□ 1階であれば外からその建物に入るまでに段差などのバリアがあるか
□ 入口は車椅子でも楽に入れるほどの開口があるか(約80cm 以上が望ましい)
□ クリニックに入ってから床上げなどの段差がなくレイアウトができるかどうか
□ 2階以上であれば、エレベーターはあるか
□ エレベーターまでのアプローチとエレベーター自体の大きさも十分か
※エレベーターは9人乗り以上であれば車椅子の方も入れますが、中に入ってから回転できなかったり、付き添いの方の事も考えるとできれば11人乗り以上のエレベーターがベストです。
□ 築年数が経っている建物であれば、雨漏りや窓の開閉がスムーズにできるか

なお、将来的に退去することも考えて、写真や画像などで物件内の記録を残しておくことも大切です。
長い年数を借りることが予想されますので、当時の状態を覚えていなかったり、その物件のオーナーが代わったりすることも考えられます。
またレントゲンが必要な診療科目であれば、電気容量も確認しなければなりません。
電気同様、レントゲンやCT、MRI等は重量もありますので、2階以上の時には特に気を付けなければなりません。

2020-12-04