医院開業における診療圏調査の実情について

診療圏調査報告書とは

開業地を決定する際にデータ的な裏付けの確認をするものとして「診療圏調査報告書」というものがあります。
開業コンサルタントや医薬品卸、最近では機械メーカーやリース会社、金融機関までも作成しているところがありますので開業を誰かに相談すると一度は目にすることになると思います。
最終的には1日の来院患者数を予想する調査がほとんどとなります。

診療圏調査報告書の内容としましては開業予定地を中心に来院の期待できる範囲の人口を算出し、厚生省が都道府県毎に発表している疾患数から先生が標榜される項目を抜粋し、範囲内にある競合機関数に先生が開業した場合のプラス1の数で割って、一日の来院患者数を算出するものとなります。

診療圏調査の精度を見極める

競合医療機関の詳細データ、院長の出身大学や年齢、来院患者数、後継者の有無から、年齢別の人口構成まで調べ上げているような細かい報告書から、5~6年前の人口データや中心地がずれているような大雑把な調査結果も見たことがあります。
ただ気をつけなければならない点としまして
・あくまでも机上のデータである点
・作成する私どもが言っては実も蓋もないのですが、作成者(社)のサジ加減で大きく数値が変わってくること
があります。

特にその物件で開業を決めてもらうとメリットがある業者さんが作成する調査報告書は、都合の良いエリアや解釈を用い、かなり主観に満ちた報告書になりがちなようです。
一目見て数値を鵜呑みにするのではなく、おかしなところがないかチェックできるくらいにはなりたいところです。
また作成者に質問して説明に一貫性がないようであれば残念ですがその報告書をあてにするのはかなり危険であると言わざるをえないと思います。
弁護する訳ではないですが、ロケーションの良い目立つ物件も、その10mと離れていない一方通行の裏路地の地下の物件でも、主観を除外して計算すると予想来院数は同じ数値になります。
あくまでもその地域の需要度として他の地域の物件と比較する際の参考値程度に留めておいた方が良いかもしれません。

実際に足で稼ぐ調査も重要

本当に開業地を決定するかどうかの判断をする時には、診察予定の平日の時間帯に実際に現場を見に行ったり、地域住民の情報を聞き込んだ方がよほど現実的な実情が判ると思いますし、それが本当の意味での診療圏調査なのだと思います。

2020-12-22