内科クリニック設計のポイント

ここではクリニック開業の診療科目の中でも内科クリニックにおける院内設計のポイントを解説していきます。

内科クリニック設計のポイントを考える

内科は特に専門的な診療科目に細分化されます。
消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、神経内科等、各々の専門的な治療を行う為の設備(診療室、処置室などの部屋や医療機器)を設計上にて考える必要があります。
ここでは一般的な内科クリニックを基本として、その補足として専門的な設備についても解説していきます。

内科クリニックの待合室の設計を考える

患者様が一番はじめに入られる部屋になります。

体調の崩された患者様が滞在する部屋になりますので、やはり広くゆったりと確保したいところです。

一般的な内科ですと患者様の年齢層は幅広く、ご高齢の方や子供連れの方もご来院されると思います。

全ての方が心地よく過ごして頂く為にも下記の部分は注意したいと思います。

ゾーン分けの重要性

待合室の中でも年齢層や用途によってある程度のゾーン分けが必要になります。

お子様のスペースと他の患者さんの動線を隔離

子供のスペース(チャイルドコーナー、キッズコーナー)を設け、お連れのお子様が大人の方のそばで遊んだりしないようにする事も大切です。
診察まで時間が掛かてしまっても子供も退屈せずに待合室にいられるようにおもちゃや絵本、DVD等があると良いです。
靴を脱いで遊べる特別なスペースですと子供も喜ぶかと思います。
子供のスペースは保護者の方や受付から管理ができ、入口や動線から外れた位置が良いでしょう。

診察前、中、後による動線確保

用途でのゾーン分けとしまして、大きくは診察前、診察中、診察後の患者様のスペースとなります。
診察前や診察中は受付後に次の診察(処置、検査)に動きやすい位置が良いですし、診察後は受付(会計)に近い位置が良いと思います。
診察室に入り、採血をする為に処置室に入るまでに、また入口付近の待合室まで戻ってしまうと、患者様の動線も長くなり、診療もスムーズに流れなくなってしまいます。
また、診察までに時間が掛かってしまっても、待合室から次のスペース(中待合コーナー等)にご案内する事によって、患者様も長く待っているイメージが薄くなるメリットもあります。

内視鏡を行う場合は、トイレとの動線や他の患者さんとの動線を考慮

内視鏡検査を行う消化器内科の場合は運営方法にもよりますが、検査待合を設け、検査前の処置を行うスペースが必要になります。
一般外来の方と別のスペースで前処置を行い、トイレにも行ける配置が望まれます。
トイレも検査用に一般外来の方とは別にあると良いでしょう。
受付の方よりも診察、処置側のスタッフが管理把握できる位置が良いと思います。

感染症隔離室設定のポイント

診療所の地域性にもよりますが、小児の患者様が多い場合は感染症待合室等で他の患者様とは別の空間を設ける事が望ましいです。

なおかつ一般の入口とは別に感染症の患者様用に入口を設けて待合、診察、処置、会計まで行える事が望ましいといえます。

しかしながら理想ばかりですとどんどん待合室が広くなってしまいますので、空間の兼用を検討しながら、待合室のゾーン分けを計画することも必要になります。

待合室の広さや設置する椅子の数の考え方

上述の理想を叶えますと、待合室には広大なスペースが必要になってしまいます。
そうしますと逆に患者様の動線が長くなってしまったり、受付の方も全体を把握できなくなる等のデメリットも出てきてしまいます。
待合室の広さとしましては、やはりイスの数が目安になります。
こちらも運営方法や診療単価にもよりますが、先生がお一人で診察を行われる場合、1時間で診られる患者様の人数の1.5倍程度のイスを目安として考えます。
仮に1時間に10人の患者様を診られる場合は10人×1.5=15脚となります。
この他にお連れの方のスペースや、患者様同士の密を避けてゆとりある空間を確保する為には、さらに×1.5~2を掛けて22~30脚程度は確保したいところです。
待合室のイスが少ないといつも混んでる印象になってしまいますし、多すぎますとコスト的にもスペース的にも無駄使いになってしまいます。
そのためには必要十分の適切なイスの数の他、予約システムなどで1日の来院患者数をできる限り平準化するなどの対策も一考に値します。

待合室のイスの形は?

待合室のイスの形状も実は重要です。
以前の診療所はベンチタイプのイスが多く使われていたと思います。
3人掛けで1.5~1.8m程度の大きさの規格サイズのベンチやソファーを並べて配置しておりました。
現在でもご使用になられているクリニックもありますが、一人用のセパレートタイプのイスを設置しているクリニックも増えてきております。
セパレートタイプのメリットとしましては、他の患者様との適度な距離を保ち、待合室のゾーン分けとしても有効に使用できる。
デザイン性が高く、種類もあり、インテリアとしても有効なアイテムになる。
将来的な配置変え、イスの増設も検討しやすい。
待合室の患者様の人数の目安がつけ易い等が挙げられます。
ただ、デメリットとしてはお連れの方と並んで座りにくい。1脚=1人となりますので椅子の数を多めに確保したい場合はスペースが必要となる。
ベンチ、ソファータイプに比べると価格が高価となる。
具合の優れない患者様が横になれない等があります。
地域性や患者層によってイスの種類も併用して検討していきましょう。

椅子の配置について

ベンチ、ソファータイプでも、セパレートタイプでも患者様どうしがあまり近づきすぎて密にならない、向かい合わせに座らないように配置しましょう。

内科クリニックの診察室の設計を考える

内科の診察室設計の勘どころ

診察室は内科に限らずクリニックにとって一番の核となる部屋と言っても過言ではないと思います。
患者様は受付の後に、まず診察室に入り、先生から初めて診察を受け、その後の治療方針の診断を受けます。
先生にとっても患者様にお会いする初めての部屋になりますので、清潔で広いイメージが良いかと思います。
診察室には診察用のデスクがあり、診察台(ベッド)や患者様のイス、荷物置きや脱衣カゴを置きます。

【診察室に置くものの一般的なサイズ】

デスク

一般的な事務デスクの奥行きは70cm程度ですが、ラウンドタイプですと100cm程度になります。
デスク上に筆記スペースと電子カルテ用PC、画像PC、インターネット用PCと3台のディスプレイとキーボードが並ぶかたちになります。
インターネット用はノート型でコンパクトサイズに抑える事も可能ですが、診察で使用するPCについてはある程度の大きさが必要となりますので、デスクの幅は160~180cmは必要になります。
デスク廻りにプリンタースペースやPC本体のスペースも必要になります。

診察台(ベッド)

検査を行わない場合は60cm×180cmが一般的な大きさになります。

脱衣カゴ、荷物置き
45cm×60cm程度

【診察室の広さ】

デスクと診察台を対面に配置した際に先生と患者様のスペースをどのくらい確保するかで部屋の幅が決まります。
患者様だけではなく付き添いの方のスペース、車イスで来られた患者様も考慮して100~140cm程度は必要になりますので、部屋の幅としては260~300cm(デスク100cm+スペース100~140cm+診察台60cm)となります。

奥行き

診察台の上下に脱衣カゴのスペース、デスク横にプリンタースペースを考慮すると280~300cm程度のスペースが必要となります。
その他手洗いや診察室を検査室として兼用する場合はエコー等の検査機器のスペースも必要となります。
将来的な機器の導入も考え、診察室はゆとりをもったスペースを確保しておいた方が良いでしょう。
診察室を2つ設ける場合は同じ広さに設定しても良いですが、全体の面積のバランスからメインの診察室は広めに設定し、予備診察室はコンパクトにする方法や、メインの診察室は診察のみを行うスペースとしてコンパクトに抑え、予備診察室を検査室と兼用しながら広めに設定する事もできます。

全体のバランスと先生の診療内容によって検討していきましょう。
ちなみに保健所の規定では診察室の推奨面積は9.9㎡以上となっております。
先ほどの寸法の300cm×300cmよりも広い面積が推奨されています。
管轄の保健所の指導内容によりますが、あくまでも推奨される面積ですので、全体の面積とのバランスと先生が使い易い広さを検討して行きましょう。

ご勤務されている先生でしたら現在ご勤務の診察室を基準に「もう少し広い方がいい」や「もっと近くに診察台があった方がいい」、「この広さが使い易い」など、実際に使用している診察室を物差しとして広さの基準を把握しておいて頂くとイメージが掴み易いかと思います。

内科クリニックの受付の設計を考える

受付について

受付は待合室に面し、患者様に対応するスペースになります。
クリニックの入口からわかりやすく、待合全体を把握できる配置が良いでしょう。

主な機能としては
・患者様の受付
・診察券や保険証の確認
・カルテの準備
・会計
・次回の予約の確認
・電話応対

等の事務的な業務が挙げられます。
以前は紙カルテを収納するスペースを広く確保しなければなりませんでしたが、近年は電子カルテが主流となり、収納スペースを少なくでき、レセプト入力、会計等の受付業務も簡素化された為、患者様をあまりお待たせせずに対応できるようになりました。

受付事務のスタッフの人数としては常時2名、混雑時に3名体制で対応するクリニックが一般的ではないでしょうか。受付の方の人数を設定し、使用する機器の配置を検討します。

受付の配置について

受付に設置する機器ですが、電子カルテ端末1~2台、プリンター、コピー、FAX、スキャナー、予約システムを導入する際は予約システム用のPC、インターネット閲覧用の一般PC、シュレッダー等になります。
受付カウンターの中でも「受付」「事務作業」「会計」「収納」スペースとエリアを計画し、それぞれを使用する目的考慮して配置を決め、スタッフ同士がスムーズに患者様と対応できるようにしましょう。
ただし、PC等の配置は今後の機器の増設や配置変更に対応できるように内側のスペースには余裕を残し、電源やLAN設備も計画しておきましょう。

受付の形状について

一般的な受付カウンターは2段形状となり、患者様と対応する高めの天板と事務作業を行う内側の作業天板の2段の天板があります。
高めの天板は床面から950~1,050mm程度で設定する事が多く、基本的に立って対応し、天板上で書類やお金のやり取りや問診表の記入を行います。
ご高齢の患者様が多い地域でしたら、少し低めに計画した方が良いでしょう。
内側の作業天板は基本的に座って作業するスペースになりますので、一般的な事務机と同じ床面より700~720mm程度になります。

作業天板上にPCモニターやキーボード、マウス、レジや、ペンたてやテープ等の細々とした事務用品をおきますが、患者様側からあまり見えないようにし、PCモニターについても向きを考慮して画面を覗かれないようにして個人情報保護の対策も必要となります。また、PCモニターは17~19インチモニターを使用する事が多く、作業天板(H700mm)の上に配置しますと、患者様側の天板(H1000mm)から50mm程度裏側が見えてしまう事になります。

待合室側から受付カウンターの印象をすっきりさせたい場合は、患者様側の天板を高めに設定したり、作業天板のPCモニターを設置する部分のみに段差を設けて高さを調整する方法や、PCモニター配置部分のみスクリーン等を設ける方法もあります。受付のイメージに合わせて検討しましょう。

作業天板下にはPC本体や無停電装置、プリンター、シュレッダーを配置しますので、スペースが必要となります。昔の事務机のように、下部までの引出しを設けるより、引出しは1段のみとするか設けないで足元のスペースを広く確保し、キャスター付きの収納ワゴンを配置した方が、自由度が高くなります。
引出しを設ける場合は引出しの深さは浅めにして、収納ワゴンが入るように計画しましょう。収納ワゴンの高さは600mm前後のものが多いですが、前もって確認しましょう。
作業天板にあまりスペースを確保できない場合は引出し部分にキーボード収納や作業用にスライド天板の設置も検討しましょう。
高さだけではなく、奥行きも重要になります。
先の述べた機器を作業天板下に配置しますので、それぞれの機器の寸法の確認が必要です。(機器未定の場合は想定。この大きさまでは設置可能・・・といったように確認しましょう)
また、本体寸法以外にも電源コードやLANケーブル等の配線のスペースも必要となりますので、プラスアルファの余裕を持ちましょう。

ただし、あまり余裕を持ちすぎますとカウンター全体の奥行きが広がってしまい、患者様との距離が遠くなってしまいます。

受付カウンター全体の奥行きは700~800mm程度とし、平面上で患者様側の天板は300~350mm、作業天板は400~450mm程度が良いでしょう。

平面上で作業天板が400~450mmでも、患者様側の天板下にスペースを設けて、作業面としては550mm前後は確保しましょう。

PCモニターを配置する部分では患者様との対応は無くなります(PCモニター越しでの対応は行わない)ので、患者様側の天板を掘り込み、作業天板を広く計画しましょう。

高さや奥行きの寸法確認の他にもPCモニターと本体を繋ぐ配線のルート、配線用の開口、待合室側に手荷物を置く棚(台)等も検討し、受付カウンターの形状を計画しましょう。

2020-12-09