整形外科クリニック内装設計のポイント

整形外科クリニック内装設計のポイント

整形外科というと患者さんにご高齢の方が多いイメージがあります。
しかしながら実際には本来運動器官の疾患は対象年齢が幅広く新生児や小児、学童、成人、高齢者まで全ての年齢層の方が対象となります。
もちろん男女の偏りもありませんので、まさに老若男女が対象といえます。
これは老化による運動機能の低下も対象として多いのですが、外傷(捻挫や骨折等)による疾患、先天的な要因による疾患も含まれるためです。
どの年齢層をメインの対象とするか、または全ての方を対象とするかによって、クリニックを立ち上げる立地条件やその面積、リハビリ機器の種類、PTなどのスタッフの採用状況等も変わってきますので、充分に検討が必要です。

整形外科の待合室の設計

基本的には一般の内科と同じですが、整形外科の場合、診察待ちのスペースとは別にリハビリ待ちのスペースも考慮したほうが、実際の患者さんの動線設計として、よりベターです。
リハビリ室内に待合スペースを設けて診察の待合室と分ける事もできますが、同一とする場合、待合室から受付、診察室、処置室、レントゲン室、トイレ、リハビリ室と基本は全ての方が同一のスペースに滞在しますので、診察待ちとリハビリ待ちのスペースを明確にゾーン分けした方が良いといえます。
次に入る部屋への動線を短くする事が診察、リハビリへのスムーズな流れを生むと同時に患者様の足腰の負担も軽減できます。
さらに足腰への負担という観点で待合室の椅子やソファーを一般のものより固めのものにしたり、座面の高さが高めのものを選定した方が良いでしょう。
整形外科ではたまに待合室が地域の高齢者の方々のコミュニティの場となっている事もあります。
診察後にあまり長く滞在されてしまうと密になり、かつ流れが滞ってしまいますが、待合室にコミュニティスペース(団欒スペース、畳のスペース等)を設けてクリニックの特色を出しても良いでしょう。

受付の設計

こちらも待合室と同様に一般の内科と同じですが、高齢者や車イスの患者様に配慮しましょう。
カウンター天板の高さを低くした車イス対応スペースがあった方が良いでしょう。
スペースが難しければ、スタッフが待合の車イスの患者様の所まで出て行くといった運営上のルールを決めましょう。
また、受付正面には手荷物置きや杖ホルダーがあった方が良いでしょう。

トイレの設計

基本的には一般の内科と同じで、高齢者や車イスの患者様対応を心がけましょう。
便器の両サイドには固定の手摺や可動(跳ね上げ式)手摺を設けましょう。
また、手洗カウンターは下部の収納を無くすか奥行きを狭めて、車イスの方でも使い易い様にしましょう。

診察室や処置室の設計

車イスの患者様と介護の方も入室できるように広めに設定しましょう。
診察のデスクも電子カルテ、画像、インターネット用のPCを配置しますので、広めに設定しましょう。
また、骨格模型等を置く棚もあった方が良いでしょう。
処置室ではどこまでの処置を行うかにもよりますが、簡単な外科処置、ギプスの装着を行う場合には水周りが必須となります。
足の洗い場も検討しましょう。

ギプスは以前の石膏タイプより樹脂タイプが多くなっておりますが、樹脂を柔らかくするのに水を使用するものと温水を使用するものがありますので給湯設備も考慮しましょう。
また、処置室にはギプスや脱脂綿、包帯、添え木テープ等の収納スペースも設けましょう。
収納スペースはどこに何があるかがすぐに把握できるように扉の無いオープン棚にしてカーテン等で目隠しをした方が良いでしょう。
神経ブロック注射を行う場合はベッドの上下左右に入りますのでスペースを設けましょう。

リハビリ室の設計

「物理療法を行う場合」

主に器械を使用した処置を行う療法です。
首や腰の牽引、マッサージ、温熱や冷却、電気刺激を患部に行う療法です。
運動療法の効果も上がりますので運動療法前に行う事が多くなります。
さまざまな器械を使用しての療法ですので、牽引やマイクロ波、干渉波の台数等どのような設備を揃えるかによってスペースも大きく変わってきます。
また、導入する器械に対しての注意点を以下に記します。

マイクロ波

器械が発するマイクロ波が影響して消防用設備の煙感知器が誤作動を起こす可能性が高くなります。
マイクロ波を発生させる器械を導入する予定がある際は事前に設計会社や施工会社に相談した方が良いでしょう。

ウォーターベッド

水装填後の器械自体が重い為、床に補強が必要になる場合があります。
また、水を装填した状態では移動が困難な為、搬入経路の確保、水道設備の有無の確認が必要となります。
電源についてはベッドごとに動力電源(3φ200V)となり、個別のブレーカーが必要となります。
将来的な台数も含めて設置場所や電源計画を確認しましょう。

その他

器械の電気容量やコンセント計画、水道設備の必要性をメンテナンス時を含めてメーカーに確認した方が良いでしょう。

「運動療法を行う場合」

器具等を使用した歩行運動や上下肢、関節等の部分運動、トレーニングマシンを使用した全身運動になります。
こちらも運動の種類によって器具の種類が異なり、スペースも大きく変わってきます。
トレーニングマシンを導入する場合は他のテナントへの振動を考慮して対策をとった方が良いでしょう。
物理療法と合わせてどのような方針のリハビリ室にするかを事前に検討しましょう。

特掲診察料「運動器リハビリテーション料(Ⅰ)」「同(Ⅱ)」の適合を受ける場合

以下の条件を満たす必要があります。
①45㎡以上の面積をもつ機能訓練室を設置
②医師は3年以上の運動器リハビリの診療経験、または運動器リハビリ研修が必要
③専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士が一定数以上勤務
(Ⅰ)・・・専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士が合わせて4名以上
(Ⅱ)・・・専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士のいずれかが2名以上、あるいは合わせて2名以上勤務
④測定器具、血圧計、平行棒、姿勢矯正用鏡、各種歩行補助具、各種車イスなどを装備

「同(Ⅲ)」を受ける場合

以下の条件を満たす必要があります。
①45㎡以上の面積をもつ機能訓練室を設置
②専従の常勤理学療法士または常勤作業療法士のいずれかが1名以上勤務
③歩行補助具、訓練マット、治療台、砂嚢などの重錘、各種測定用器具などを装備
開院時だけでなく将来の構想を立てなけらばいけませんが、共通してリハビリ室45㎡以上がひとつの基準となります。
その他の部分は器具やスタッフの人数になりますので変更は行いやすいです。
ただし、開院後にリハビリ室を広げる等の変更は、その他のスペースを狭める必要があり、工事には時間も費用もかかってしまいますので容易では無いかと思います。

当初から45㎡以上のリハビリ室を確保するクリニックが一般的だと思います。
なお、物件面積によりリハビリ室を45㎡以上確保する事が困難な場合はリハビリ室と処置スペースを兼用して基準を満たすクリニックもあります。
ただし、兼用する分、リハビリ器械のスペースがとれなくなりますので、やはり余裕のある物件面積が望ましいといえます。
整形外科の場合、どのようなリハビリ室にするかで他のクリニックとの差別化が図れます。 リハビリ器械の種類、台数、X線装置の種類や骨密度の導入等、事前に検討してクリニック全体の必要面積を検討することが必要です。

2020-12-12